エレベーターから降りるときは、客や目上の人から先に出るよう促す──当然のビジネスマナーだが、最近これがかえって迷惑になっていることも多い。東京・目黒区議で芸能レポーターの須藤甚一郎氏(78)がいう。
「オフィス内ならそのマナーが重要なのは理解できます。しかし腹が立つのは、駅や公共機関など不特定多数が使うエレベーターでも上司や取引先に“どうぞ、どうぞ”とやっている人間が多いことです。
エレベーターに乗り合わせた人には、その2人の上下関係などどうでもいい。それなのに“どうぞ、どうぞ”の譲り合いのせいで急いで降りたい人が困っている。他人に迷惑をかけてしまうマナーなど、マナーとは呼べないでしょう」
最近では、たまたま乗り合わせただけの赤の他人同士でも“どうぞ、どうぞ”が“当然の思いやり”になりつつある。
「開」ボタンを押して全員が降りるまで待つのは「礼儀をわきまえたいい人」であり、気を遣わずにサッサと降りてしまうのは「非常識な人」──そんな目で見られてしまうことも少なくない。須藤氏は「それこそ過剰だ」と怒る。
「エレベーターというのは本来“急いでいる人のためのもの”だと思うんです。年齢や性別、上下関係を気にせず、急いでいる人間はサッと降りて、そうでない人間はのんびり後から降りればいいだけのこと。礼儀正しい日本人の性格が悪い方向に表われている。もっと合理的に考えればいいのに」
余計な親切は時に「大きなお世話」になる。
※週刊ポスト2018年1月1・5日号