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いつまで続く? 貴乃花親方の沈黙と「スリーパー効果」

 沈黙の意味を探ろうと、人はあれこれと憶測する。問題が発覚した当初は、関与した人が誰も口を開かなかったこともあり、その場にいた力士から話を聞いたという人たちが、こぞって情報提供をしていた。ビール瓶で殴ったという情報を始め、八百長に関する話や理事長選に絡む話など、次から次へと噂が出てくる。

 信ぴょう性があるのかないのかわからない情報でも、時間が経つうちに情報そのもののインパクトだけが残って、説得力を増してしまうことを「スリーパー効果」という。貴乃花親方の沈黙によって様々な噂が立ち、スリーパー効果でさらに世間の関心を引き続けているというわけだ。それは同時に、相撲界の抱える問題を浮かび上がらせてもいる。だが何より貴乃花親方自身が、自分はこういう親方でこういう人間だと印象づけているという気さえする。

 沈黙は、何も話さない何も伝えないということと同じではない。人と距離を取りたい時、人は沈黙したままでいることで心理的距離を作り出すことができる。相撲協会とも、マスコミとも心理的距離を取るというのが、今の貴乃花親方の意思なのだろう。

 さらに沈黙には、相手の意見や決定に直接反発することで相手の体面を傷つけたくないという、心理的な含みがあるといわれる。この含みは、相撲界にある独自ルールに則っているような感じもする。上の者がこうと言えばそれに反論はできず、下の者はただ黙っているのみ。貴ノ岩が殴られていても、白鵬が止めなければ、他の力士が日馬富士を止めることなどできないという暗黙の了解と同じだ。

 だとすれば、同じ土俵に上がって対決しようとしても、最初から勝負の結果は見えている。理事でありながら警察に捜査を委ねたのには、そういう理由もあるのだろうか…?などと、貴乃花親方の沈黙をいいことに、こちらもあれこれ推測したくなってくる。

 21日に行われた再発防止の研修会では、厳しい表情のまま、評議委員会の池坊保子議長の話に耳を傾ける貴乃花親方の姿があった。でも八角理事長の話には、眼光鋭く冷ややかな顔で、いくぶん首を傾げるような仕草を見せていた。協会への不信感は、未だ拭えないのだろう。

 貴乃花親方の処分は28日の臨時理事会まで、先送りになった。貴ノ岩の聴取を許可したり、これまで出していなかった人材育成契約を結ぶ誓約書を提出するなど、態度を軟化させているという報道もあるが、果たして何が真実なのか、依然、貴乃花親方の胸の内はわからない。まだしばらくは、スリーパー効果が続きそうな相撲界だ。

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