今でこそ「体罰はあってはならないもの」との考え方が広まり、少しでも教師が生徒に手を出そうものなら大きな問題になりかねない。しかし、かつての日本では体罰は当たり前だった。
「私も、学校の先生から平手打ちされまくってましたよ。天然パーマで髪の毛が縮れていたから、先生に耳を引っ張られて、『明日まっすぐにしてこい!』と無茶なことを言われていました」
こう語るのは、脚本家の橋田壽賀子さん(92才)。物書きになるきっかけの1つは、「愛の制裁」だったと振り返る。
「思い出に残っているのは小学校時代の国語の先生です。厳しくて怖いかたで、私はよくバケツを持って立たされていました。だけどその一方で『教科書を読むのがうまい』と褒めてくれることもあって、大好きな先生だった。気に入られたい、期待に応えたいという一心で国語の勉強を一生懸命に頑張ったものです。それが現在の物書きという仕事につながっているのかもしれません」
そうした思い出があるから、橋田さんが脚本を担当する人気ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)には、家族に手を上げるシーンが登場する。たとえば、5姉妹の父である岡倉大吉が結婚して家を出た末娘の長子に対し、妻として母としての自覚を促すため、歯を食いしばって平手打ちをするといった場面だ。
「自分の経験から、根底に愛があれば、ときに手を上げても、相手に気持ちは伝わると信じています。だからドラマでも、叩くことでわが子を諭すシーンを描きました」(橋田さん)
さらにこうも話す。
「人を叱ることや説教することにはものすごくエネルギーが必要です。普通は面倒だからそんなことしませんよ。見て見ぬフリをしていた方が楽ですから。あえて叱るのは、そこに愛があるからです」(橋田さん)
※女性セブン2018年1月4・11日号