定年退職する60歳以降、「夫婦の合計収入」が安定収入を考えるときに重要な鍵となる。同い年の夫婦を前提として、シミュレーションしてみよう。妻が60歳以降にパートに出て家計を助けてくれる場合、年金(基礎年金、厚生年金)受給を「繰り上げ」する必要性は薄れてくる。「年金博士」こと社会保険労務士・北村庄吾氏が解説する。
「税制改正によって2018年から、妻の年収が150万円以下なら夫の配偶者控除は削られないことになりました。妻がパートで月収10万円程度(年収約120万円)を稼いでくれれば、夫が再雇用で月収20万~25万円程度になっても、税制上不利になることもなく、生活費を賄える。この場合、夫婦ともに『繰り上げ』は必要ないでしょう」
結果、「夫婦で65歳」受給が現実的な選択肢となる。さらにいえば、妻が働くことで60~64歳時の家計に余裕が生まれ、その間に65歳からの年金額を“増やす”方法がある。
「夫は60歳以降は厚生年金に加入しない働き方をする。その上で、国民年金に任意加入するのです。大卒サラリーマンの場合、22歳で働き始め、60歳で定年を迎えるのが一般的。就職前に国民年金の保険料を払ってない人が多く、加入期間は38年となり、満額支給(年77万9300円)の40年に少し足りない。その足りない分を任意加入で埋めるのです」(同前)
加入期間38年の人が定年後に2年間任意加入すると、支払う保険料は合計39万5760円(月額1万6490円)。それによって65歳以降の受給額は年間約3万9000円増える。65歳から10年以上生きればもとが取れる計算で、平均寿命を考えれば、十分に“お得”なのだ。
※週刊ポスト2018年1月1・5日号