国内

原武史氏 女性天皇について「血の穢れ問題にメス入れよ」

皇位継承の問題点を語る原武史教授

 2019年4月30日で天皇皇后両陛下が退位することが決定した。その一方で、長期的な皇室の存続を目的として、「女性宮家創設」の必要性も唱えられている。そこで、著書に『皇后考』『〈女帝〉の日本史』などがある放送大学教授、明治学院大学名誉教授の原武史氏に、問題点を聞いた。

 * * *
 男系の男子のみに皇位の継承を認めるという今の皇室典範を墨守することが、いずれ立ち行かなくなるのは明らかだと思います。

 ヨーロッパやアジアには王政を敷いている国が複数ありますが、そのような国には女帝もいれば、女系もいたわけです。万世一系が保てないならば天皇制はなくなってもいいという考えの人たちは「他国とは違い、世界で唯一日本だけが崩さず保ってきた」という点に誇りを感じている。それこそが「国体」であり、逆にいえば、女系天皇が誕生して万世一系のイデオロギーが崩壊したときに「日本が日本でなくなってしまう」という考えなのでしょう。

 ですが、男系の男子に固執することは、現実的には将来、悠仁親王の結婚相手に男子が誕生するまでとにかく子供を産ませるということにしか解決策はありません。昭和天皇の妻である香淳皇后は今上天皇を産むまでに4人の女子を産んでいます。5人目に、やっと皇位継承権をもつ男子が生まれた。現代においてこれと同じようなことを強制すれば、立派な人権侵害といわざるを得ません。

 明治初期に天皇が全国を回ったとき、地方の人々が天皇をすんなりと迎えたのは、政府がつくった神道のイデオロギーを受け入れたからではなく、民俗学的な「生き神」だと思ったからです。こうした「生き神」信仰は、今なお残っています。仮に皇統が途切れたとしても、必ずまた別の「生き神」が出てくる。天皇という存在や皇室がなくなったとしても、その信仰自体は残ると思います。

 ただ私は、もっと根本的な問題があるような気がしています。それは、皇室に男性よりも女性により多くのプレッシャー、負担がかかるようなしきたりが厳然と残っているということです。

 端的にいえば「血の穢れ」の問題です。2016年の天皇の「おことば」からもわかるように、天皇皇后が重要視していることの1つは「祈り」です。宮中祭祀はその最たるものといっていい。ですが、宮中には女性の生理や出産にともなう産褥を穢れと捉える考え方があります。生理中であれば、宮中三殿にあがることさえできない。明治以前からのしきたりによって絶対的な「男女の差異」を認めてしまっている。そこにメスを入れようとしない限り、女性天皇や女系天皇に関する議論は足元がおぼつかないままだと思います。

※女性セブン2018年1月4・11日号

関連記事

トピックス

女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト