芸能

春風亭一之輔 ファンにはたまらない独演会の「ネタおろし」

春風亭一之輔の魅力を落語通が語る

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、ある演目を初披露する「ネタおろし」の楽しみについてお届けする。

 * * *
 ある演目を初めて高座に掛けることをネタおろしという。春風亭一之輔は2014年から毎年、東京・よみうり大手町ホール(客席数501)でネタおろし演目を予告する独演会を行なっている。初年は「一之輔一夜」でネタおろし1席、翌年は2日連続開催の「一之輔二夜」でネタおろしは2席、以下「一之輔三夜」「一之輔四夜」「一之輔五夜」と続き、ネタおろしも毎年1席ずつ増えていく。

 大きな会場での独演会でネタおろしを予告するのはかなりのプレッシャーだろう。熱心なファンはそれを聴くためにチケットを買うわけで、初演の段階で既に磨き上げられた「その演者ならではの噺」になっていることが期待されるからだ。

 若き日の立川談志が独演会で『庖丁』をネタ出し(演目予告)しながら「どうしてもできないので」と三遊亭圓生に代演を頼んだのは有名な話だが、それで客を納得させられるのは談志だけだ。

「一夜」は『文七元結』、「二夜」は『三軒長屋』と『百年目』、「三夜」では『三井の大黒』『睨み返し』『柳田格之進』がネタおろし。2017年の「一之輔四夜」は10月18日から4日間連続で行なわれ、ネタおろしは『猫の災難』『文違い』『心眼』『二番煎じ』の4席。例年どおり、歴代の名人が手掛けた大ネタばかりだ。

 初日の『猫の災難』は、酒がなくなった言い訳を「酒呑童子が来たことにしよう」と思いつく酔っぱらった主人公の暴走っぷりがバカバカしくて素敵だ。「俺って面白い!」なんて台詞は一之輔ならでは。2週間後の中野での独演会でも再び『猫の災難』に出会ったが、一層パワーアップしていて、早くも持ちネタとして定着しそうな予感。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン