芸能

姫乃たま 地下アイドルの炎上とガチ恋問題を総括

地下アイドルも仕事として認められてきたと語る姫乃たまさん

 テレビなどのメジャーなメディアにほとんど登場しない地下アイドルの女の子たちが、とても多いことは知られるようになりました。とはいえ、まだまだどんな仕事か知る人は少ない職業です。2017年、デビューから8年が経った地下アイドルでライターの姫乃たまさんは、『職業としての地下アイドル』という本をまとめることによって、どんな特徴をもった女の子たちが地下アイドルに多いのかを描きました。みずからの地下アイドル活動を通して感じた、アイドルとファンに起きた2017年の変化について姫乃さんが振り返ります。

 * * *
 2017年は少しずつですが、地下アイドルが仕事のひとつとして認められたのかなと感じる年になりました。

 地下アイドルはマスメディアよりも、ライブハウスを中心に活動しているので、イベントやライブに足を運べば、メジャーではないアイドルたちの活動がどんなものか把握することができます。しかし、実際の現場(ライブやイベント)を知らないまま、インターネットの目立つニュースだけを見ている人たちには、過激なことをしているよくわからない存在だと思われていました。

 そのため以前は、テレビや週刊誌から地下アイドルとして取材される際、「過激で過酷なエピソードをお願いします」「枕営業について話してください」と求められることがほとんどでした。それが最近、普通にどんな仕事なのか聞いてもらう機会が増えたのです。

 去年の5月、小金井ストーカー殺人未遂事件が起きた直後は、そういった過激な印象が蔓延していて、なかなか普通の仕事だと分かってもらえませんでした。そもそも被害者の女性がアイドルではなかったことと、地下アイドル業界が危険でないことを知ってもらいたい一心でメディアからの取材を受け続けました。しかし、「地下アイドルをしていて危険な思いをしたことがあるか」などの質問が何度も繰り返されたり、結局編集によって話した意図と違うように放送されるなど、傷つくことの連続でした。

 しかし、今年になって、NHKの人形劇×赤裸々トークショー『ねほりんぱほりん』が地下アイドルについて丁寧に調べたうえで、ファンの様子も含めて再現していて、テレビの方々が偏見なく実態を知ろうとしてくれている様子が伝わってきました。それからほかのテレビ番組でも、地下アイドルの活動がどのようなものか、職業のひとつとして聞かれる機会が増えたのです。

 いままで過激な内容ばかり要求されたメディアから、地下アイドルをほかのよく知られた仕事と同じように見てもらえたことで、私自身の傷まで癒やされる思いがしました。

 同時に、地下アイドルをめぐる変化といえば、2017年は炎上らしい炎上がほとんどなかったように思います。

 地下アイドルは実際の現場の様子がわかりづらいため、世間の人たちにはインターネットの炎上で知ったニュースが印象にあるはずです。地下アイドルの炎上については、2010年代のアイドルブームのなかでも、地下アイドルの文化を耕してきたBiS-新生アイドル研究会-からの影響が強くあります。

 メンバーが全裸で山を駆けている(ように見える)PVを公開したり、スクール水着で客席にダイブするなど、BiSによる過激なパフォーマンスは常に注目を集め、ネット上で論争を巻き起こし、その結果アイドルに興味がなかった人の目も引きつけました。

 彼女たちに追いつきたいフォロワーのようなアイドルグループも数多く誕生しましたが、後追いで無闇に過激な言動をとる人たちが増えたため、地下アイドル=炎上のイメージが強くなったことは否定できません。

 しばらくは、炎上して知名度をあげようとするアイドルや運営も少なくありませんでした。しかし、最近では以前だったら間違いなく炎上したであろうことも、ついに炎上しなくなったのです。

 たとえば今年、未成年のメンバーがアクリル板越しにファンとキスをするイベントを実施したアイドルグループがいました。その様子はTwitterでも報告されましたが、以前ほど炎上していませんでした。炎上しそうな企画が炎上しなくなったのは、アイドル文化が成熟を迎えている証拠でしょう。

 ただ円熟したことで、ブームとしてのアイドル/地下アイドルは、峠を超したように思います。開催されるイベントの数に大きな変化はなく、次から次へと女の子がデビューして辞めていくことにも変わりありません。その一方で、2年ほど前から有名なアイドルグループの解散が相次ぎ、「無銭イベント」(無料のアイドルイベント)も、以前は新人の地下アイドルを探して、アイドルファンが大勢駆け付けるのが常でしたが、最近は賑わいが少し小さくなっているとも聞きます。

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