これも深刻な格差社会ゆえの事象なのか。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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走る車にわざとぶつかって賠償金を取ろうとする──。洋の東西を問わず、貧困地域でよく聞かれる話で、これを「当たり屋」という。もちろん「当り屋」は中国にもたくさんいて、富裕層から金をとろうとする者は後を絶たない。なかには酷い事故につながるケースもあり、関連する報道も頻繁に見かける。
だが、中国社会では最近、車をターゲットにするのではなく、ある別の方法によって金持ちから、お金をせしめようとする行為がはやっているという。それこそペットに自分を咬ませて、賠償金を狙うというものだ。中国では、「ペットの当たり屋」行為というそうだ。四川省の『成都商報』(2017年11月22日)が報じている。
一口に「ペットの当たり屋」といっても手口は簡単ではない。単に「咬まれた」といっても一緒に医者に行って医療費を払わせたら、それ以上に取れるのは見舞金程度のものだ。『成都商報』は最近はやりのこうした事件の詳細な例を報じているのだが、それによれば犯罪者たちが使っていたのは、狂犬病のワクチンに絡んで金銭を取得するというやり口だった。
実は、中国ではいまだに犬に咬まれれば、狂犬病に罹ってしまうリスクを背負い込みかねないという極めて危険な事情が背景にはあるのだ。『成都商報』が報じた今回の事件でも、犬の飼い主が被害者を病院に連れて行くと、真っ先に医者から勧められたのが狂犬病の対策をすることだった。
当然、その場の対策となるところだが、医者はなぜか注射を拒み始める。理由は、「できるだけ早く故郷に帰らないといけないので、治療費は現金でほしい」というものだった。
これに不信感を持った加害者が防犯カメラを見直し、疑惑を深めて警察に連絡した。警察の捜査によって事件は犯罪グループによる犯行であることが判明。一人が何らかの方法で犬の飼い主の気を引き、もう一人がそのスキに犬に咬まれるという手口だったという。
それにしても本当に狂犬病に罹るリスクもあるというのに、目の前の金とは。