長年、プロダンサー、トレーナーとして活躍してきた周防進之介さんが、筋肉の動きや体のメカニズムを研究し、歌と融合させて生み出したエクササイズ『カラフィット』が今、若者のフィットネスとしてだけでなく、高齢者施設や自治体の介護予防イベントなどでも大人気だという。高齢者向けのプログラムでは、カラオケ画面に『お祭りマンボ』(美空ひばり/1952年)や、『高校三年生』(舟木一夫/1963年)などが流れ、これらを歌いながら体を動かす。
『カラフィット』は当初、若い女性向けの美容やダイエットのためのプログラムとして作られたが、超高齢化社会の今、シニアの健康に役立てるべく高齢者向けプログラムを開発。さまざまなよい効果が期待されているという。
「たとえば呼吸と歌のリズムを合わせることで、心を落ち着かせるホルモン、セロトニンを分泌する神経が活性化されることが検証されており、認知症やうつの予防、改善効果が期待されています。
歌と運動のほかに、記憶計算の課題を盛り込むこともあり、懐かしい歌を楽しみながら、少し複雑なリズム運動と簡単な記憶計算を交互に行うと、大いに脳を刺激し、活性化につながると思われます」
ただ高齢者の場合、筋肉が硬くなっていることが多く、運動効果の妨げになるという。
「中でも硬くなりやすいのが肩甲骨、腰、股関節まわりの筋肉。とくに肩まわりの筋肉が硬くなると呼吸量が減る。いわばエンジンの回らない車のようになってしまうのです。そのためプログラム中、多くの時間を割いて肩、腰、股関節を中心にストレッチを行います」
また呼吸をするとき、吐ききれていないことも指摘する。これは高齢者に限らず、多くの現代人が陥っているという。
「多くの人が7割くらいしか吐ききれていません。吐く筋肉が弱いのです。プログラムの随所で行う深呼吸では、吸うときのカウントの3倍の長さをかけて吐き出すようにします。しっかり吐くとしっかり酸素が取り込まれ、血流がよくなります」
そしてなにより『カラフィット』の大きな効果は“ときめき”だと言う周防さん。
「カラオケの力は大きいと思います。多くの研究・検証を重ね、科学的根拠のある健康効果が特徴の『カラフィット』ですが、参加される高齢者のかたがたは理屈抜きに楽しんでくださっています。
なじみのある懐かしい歌にのせて行うと、運動も作業も楽しくなる。心がときめいているのがわかる。それ自体が健康にいいのです。これからの時代、高齢のかたがたには長く健康で元気で、下の世代を引っ張っていくような気持ちを持っていただければと思っています」
※女性セブン2018年1月4・11日号