AbemaTVによる大晦日の特別番組『朝青龍を押し出したら1000万円』は、取組が始まる前に視聴数が100万を超え、最後の挑戦者である元琴光喜の取組が始まる頃には500万を超えた。番組が終了したときには、元大関琴光喜との取組に感激したとの意見がネットでは多く見られていた。この特番の最初から最後まで、4時間45分見続けたイラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、番組としての完成度について振り返った。
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大晦日、テレビ局は各々力を込めた特別番組を放送する。そのとき、インターネットテレビの盟主AbemaTVでは『朝青龍を押し出したら1000万円』を配信していた。
力自慢の挑戦者が朝青龍と相撲、勝てば1000万をゲット。説明するまでもないが、タイトル通りの内容である。
12月31日20時00分から1月1日00時45分まで。4時間45分の長丁場。
“朝青龍が7年ぶりに取組”ここだけを見れば、素晴らしい番組だ。しかし、ネックとなったのは放送時間の異常な長さ。ここがキツくて仕方ない。
朝青龍への挑戦したのは、琴光喜(元大関)、ボブ・サップ(格闘家)、泉浩(柔道銀メダリスト)のVIPチャレンジャー3人。そして、一般応募から選ばれた5人の計8人の猛者達。
挑戦者は8人、書かずもがな朝青龍は番組内で8回相撲を取る。取組は短ければ一瞬、長くて1分ほど。挑戦者がいくら粘っても、相撲シーンの取れ高はマックス8分だ。
最大の見どころ“朝青龍の取組”は8分以下、比べて長すぎるのが4時間45分の放送時間。
単純計算してみよう、4時間45分-8分=4時間37分
「4時間37分間の空き時間、なにをやりたいんだ!」とツッコミたくなる番組であった。
格闘技の放送には、試合で戦う人間を紹介する“煽りVTR”がつき物。視聴者は、そこで格闘家の強さや戦う理由を学ぶ。事前情報を入れることで、応援にも気持ちがこもる。
2000年頃、日本格闘技シーンを席巻した『PRIDE』。圧倒的な支持を得た理由の1つが、試合を盛り上げる“煽りVTR”の秀逸さ。
格闘技番組は、試合をやっていない時間に、視聴者を飽きさせないことが重要。よって、“煽りVTR”が大事になってくる。
『朝青龍を押し出したら1000万円』は、良い意味でも悪い意味でも真っ向勝負。朝青龍と挑戦者以外のコンテンツは用意していない。幕間のコントといった、お笑い要素も一切ない。
ゆえに、相撲以外の4時間37分間は“煽りVTR”を流し続けるハメに……。
視聴者からすれば、史上最も長く“煽りVTR”を見続ける番組。
番組制作側からすれば、史上最も長く“煽りVTR”で視聴者の興味を持続させる番組。
2つの意味でミッションインポッシブル! 不可能な任務!
どんな朝青龍のファンでも見続けるのは難儀だろう。どんな名監督でも4時間37分間の飽きない“煽りVTR”を作ることは不可能だ。
更に、事前番組から見ていた僕のような人間にはすでに知った情報。
「ミニにタコ by田代まさし」できるほどに再放送、見続けることは苦行に近い。
取組後の朝青龍の休憩などを考えれば、仕方ない構成だと分かる。
だけど、視聴者にガマンを求め過ぎだって!
番組で唯一満足できたのは、朝青龍の異常な強さ。