政府の地震調査委員会は、かねてより懸念される南海トラフ地震について「マグニチュード8以上が30年以内に60~70%の確率で発生する」とアナウンスを発してきた。昨年末は北海道東部・千島海溝沿いにも巨大地震のリスクを指摘。「マグニチュード9クラスが起こる可能性は30年以内に7~40%」と発表し、大新聞の1面を賑わせた。
しかしそのような警鐘は、効果的な注意喚起になり得るか。いつ起こるかわからない大地震に対し、高いレベルで警戒を続けるのは非常に難しい。
そうした「雲を掴むような予測」とは全く異なるアプローチで地震発生の可能性を察知しようとしているのが、測量学の世界的権威として知られる村井俊治・東大名誉教授が開発した「MEGA地震予測」だ。
同予測のベースとなるのは、全国1300か所に設置された国土地理院の「電子基準点」のGPSデータだ。そのデータをもとに地表のわずかな動きをキャッチし、地震発生との関連を分析する。1週間ごとの基準点の上下動による「異常変動」、地表の長期的な「隆起・沈降」(上下動)、地表が東西南北のどの方向に動いているかを表わす「水平方向の動き」の3つを主に分析し、総合的に予測する。
村井氏は2016年4月に発生した熊本地震を直前に「熊本・鹿児島で顕著な沈降傾向」と注意喚起するなど、多くの大地震の兆候を指摘してきた。
村井氏自身は「ピンポイントの予測には遠いので、精度を高めていかなければならない」と“研究途上”であると強調するが、その「的中実績」は高い。だからこそ本誌は定期的に村井氏の予測をアップデートしている。
今年、警戒を強めるべき地域はどこなのか。村井氏が会長を務める民間会社JESEA(地震科学探査機構)の協力のもと、最新警戒ゾーンを掲載する。