一時の大ブームは過ぎたかもしれないが、リアリティショーの人気は健在だ。なかでも手堅く人気が高いのが、家族で何かに奮闘する様子を追ったものだ。元プロボクサーの亀田興毅、大毅、和毅の三兄弟と父・史郎の亀田一家は、家族に密着したドキュメンタリーという名のリアリティショーによって知名度と人気を獲得していった。三兄弟の引退によっていったんは終わったかに思われた亀田家の物語が、AbemaTVによって復活した。イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、2018年1月1日におこなわれた『新春ボクシング祭り! 亀田一家人生を賭けた3大勝負』で綴られた新しい物語の魅力について考えた。
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1月1日、民放各局は大型バラエティ番組を放送していた。
その裏、AbemaTVでは『新春ボクシング祭り! 亀田一家人生を賭けた3大勝負』(13:00~23:00)が配信された。
亀田家とAbemaTV、この良縁がスタートしたのが2017年5月。AbemaTVの1周年記念番組『亀田興毅に勝ったら1000万円』に由来する。
オーディションで選ばれた4人の猛者達が、亀田興毅と3Rの拳闘。もちろん誰一人として勝つことはなかったが。
この番組をキッカケに、AbemaTVでは奇妙な展開が始まる。それこそ亀田家から紡ぎ出される物語が数年ぶり復活。「亀田家サーガ」としか例えようのない物語が綴られ始めた。
挑戦者の1人であった人気YouTuberジョー・ブログが亀田興毅に弟子入り、ボクシングのプロライセンス取得への日々を追う番組がスタート。
これまた挑戦者であった歌舞伎町の人気ホスト・神風永遠を主役とした特別番組『神風永遠軍団に勝ったら300万円~全日本パリピ飲み会選手権』も配信された。ゲストで亀田興毅も参加。
昨日の敵は今日の友、「週刊少年ジャンプ」も真っ青な亀田家リブート物語。物語の根幹にはあるのは、ボクシングによる人間更生だ。
1999年から2003年まで放送されていたリアリティ番組の一コーナー『ガチンコファイトクラブ』、同時期に始まった家族への密着取材とセットの『亀田世界戦』と同じ地平にあるストーリー。TBSの十八番がAbemaTVに移ってきただけの話なんですな。
映画のリブートと同様に、過去の面倒な箇所は知らぬ存ぜぬ。亀田家が行ってきた愚行は、全て無視。最終的には、亀田史郎まで登場し、まっとうな指導者として扱われ始めた。
『亀田一家人生を賭けた3大勝負』は、亀田大毅に勝ったら1000万円、ジョー・ブログのプロデビュー戦、そして亀田三兄弟の従兄弟・亀田京之介のプロデビュー戦の3つから構成される。
亀田京之介戦について、亀田史郎はこう語った。
「(京之介)は1R23秒で倒すとアイツも言うてるやろ、それはやっぱり有言実行せな。亀田家は有言実行やってきた」
正直、どの口が言うのかと思った。亀田大毅が内藤大助戦で散々吹いた「負けたら切腹する」は、どこへいった。
しかし、この反論を史郎本人に言えば「いや、それはボクシング界を盛り上げるためや!」と返答されるはず。
更に詰めれば「昔のことガタガタ言うな、ボケ!」と憤怒するだろう。
このちゃぶ台返しこそ、亀田史郎のテクニック。「オレがこうだから、こうだ!」という究極のジャイアニズム原理主義者である。
ジョー・ブログ、亀田京之介の前哨戦を終えたのが、配信開始から5時間後の18時。
この頃合いから、亀田家の伝統芸能「試合はこのあとスグ」攻勢が始まる。“煽りVTR”を見せられ2時間後の20時頃、やっとことさ初戦のゴングが鳴った。
試合内容は、非常におざなりであった。
今回は初戦の相手を除き、全てT.K.O勝利。第3試合の“貧乏シザーハンズ”三輪太一だけ第2Rまで粘ったものの、どの試合も圧勝につぐ、圧勝。見ていてハリが全くなかった。
前回の『亀田興毅に勝ったら1000万円』では、挑戦者が意外に拳闘を健闘。1R保たない挑戦者は1人しかいなかった。それに比べると出来が悪すぎる。
最も期待値が高かった挑戦者・和田高志は「俺は神だ、他の人とは違うよ」と調印式でイキリ倒す。身体に刻まれた「神」の文字を自慢し、亀田京之介と舌戦を繰り広げた。