医療や介護の自己負担増が相次ぎ、老後資金の“虎の子”である退職金の重要性は増している。一般的な額は大卒の総合職で約2374万円、高卒の生産・現業労働者で約1821万円(経団連調査2016年9月度)だ。
退職金の受け取り方は大きく2つ。一括でもらう「一時金方式」か、分割してもらう「年金方式」かだ。
ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「一括が断然有利」と指摘する。
「退職金を一括でもらうと『退職所得控除』が適用されて、税制上のメリットが大きい。たとえば大卒から定年まで38年間働いた場合、最大2060万円まで退職金を一括でもらっても税金はかかりません」
年金方式にも「公的年金等控除」があるが、控除額は一括より圧倒的に少なく、課税対象になることが多い。しかも政府は2018年度税制改正で公的年金等控除のカットに踏み込む方針だ。
さらに年金方式だと、月々の受取金が「月収扱い」なのも大きなデメリットだ。
「定年退職後に国民健康保険に加入する場合、『公的年金収入+退職金の分割受給額』を世帯収入とみなして保険料が計算され、世帯収入が多いほど保険料が高くなります。
また世帯収入が現役並みの場合、医療費の窓口負担(通常70~74歳は2割、75歳以上は1割)が現役世代と同じ3割に引き上げられます。さらに今年8月からは、現役並みの収入だと介護サービスの自己負担が2割から3割に引き上げられます」(深野氏)
年金方式で受け取ると税金だけでなく、健康保険や医療、介護でも負担増となるケースがあるのだ。
「ゆえに『高額の退職金を一度に手にしたら浪費してしまう』という人以外は、できるだけ一括でもらうべきです」(深野氏)
※週刊ポスト2018年1月12・19日号