香港の美容医療チェーン「香港DR医学美容集団」で肌の若返りなどの治療を受けた女性1人が死亡、2人が両足を切断するなどの医療被害にあったとして、香港高等裁判所は12月中旬、同集団のオーナー兼院長に懲役12年、治療担当責任者に懲役10年の判決を下したことが分かった。
抗がん治療に用いる免疫細胞を静脈注射で患者に投与したあと、症状が悪化したもので、1回の治療費は5万9500香港ドル(約87万円)と極めて高いことから、裁判所は「医療的に全く根拠がない治療法であり、金目当てであり、美しくなりたいという女性心理を利用した極めて悪質な犯罪」などと断罪した。香港各紙が報じた。
オーナー兼院長は周向栄で、治療担当責任者は陳冠忠。陳は周の命令で、肌を美しくする血液製剤の製造を研究、がん治療の際に用いられる「ナチュラルキラー細胞」を血液中に投与する処方を思いついた。
陳は2012年10月、この処方の安全性を確認せずに、60代の女性3人に治療を施したところ、女性1人が24時間後に容体が悪化し、6日後には死亡してしまった。
もう1人も女性も危険な状態に陥ったことから、他の病院に搬送。この女性は両足と手の指4本を切断することになったが、命はとりとめた。さらに、もう1人の女性も危ない状態だったが、治療の甲斐があり、いまは奇跡的に回復しているという。
裁判で証言に立った同集団の従業員はオーナーの周について、「野心家で、独善的、カネの亡者」と批判しており、女性心理に付け込んで高額な治療費を請求していたことを明らかにしている。