安倍晋三首相が経団連に要請した「3%賃上げ」は今年こそ実現するのか。カギを握るのが春闘相場のリーダー役となるトヨタの豊田章男社長だ。同社は昨年ベアと家族手当増額などを合わせて月額2400円の賃上げを実施。この金額には“安倍プレミアム”が上乗せされていたという。
「1年前、就任前のトランプ大統領がトヨタのメキシコ工場建設を批判するなど日本車叩きを強めていた。トヨタは北米市場の先行きに不安を感じて、賃上げを抑制するつもりだった。そこで安倍首相は2月の訪米前に豊田社長と会談して意見を聞き、トランプ氏に日本車叩きをやめるように働きかけた。そうした働きに配慮して2400円アップになった」(安倍側近)
首相が掲げる「3%賃上げ」を実施する場合、トヨタは2015年春闘並みのベア4000円(定昇を合わせて組合員平均3.22%アップ)前後の賃上げが必要になる。
豊田社長は「自動車業界は100年に一度の大変革の時代に入った」と電気自動車や自動運転など次世代技術に大規模な投資を行なうことを発表し、今月、大幅な組織改革を行なう。経済ジャーナリストの磯山友幸氏はこう見る。
「この社内改革が終わる前に大幅な賃上げをすれば、多くの従業員を抱えるエンジン車製造部門の人件費がかさみ、足を引っぱってしまう。トヨタは官邸においそれと尻尾をふるような会社ではありません。長期戦略からみて3%増の“満額回答”は難しいのではないか」
トヨタは「賃上げ」実現について「労使で真摯に議論したい」(広報部)と回答。安倍官邸はどんな懐柔策に出るのか。その勝負の行方が2018年の国民生活、日本経済の分岐点になる。
※週刊ポスト2018年1月12・19日号