中国は既に多くの世界レベルのアスリートを輩出しているが、一方で人気があるにもかかわらず成績が伴っていかない競技もある。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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北京オリンピックで50を上回る金メダルを獲得して世界を驚かせた中国だが、そのスポーツ大国──といっても従来はメダル製造マシーンで、アマチュアスポーツが盛んであるとは言い難かったのだが──にあって、七不思議とされているのかサッカー男子とバレーボール男子が、国際大会においてパッとしないことだ。
どちらも中国では人気スポーツであり、スポーツで国威発揚しようとする中国であれば大金を投じて強化することなど朝飯前のようにも思えるのだが。それがなかなか強くならないのだ。
「なかでも深刻なのが男子サッカーのナショナルチームの低迷です」
と語るのは、北京の夕刊紙の記者だ。
「中国人はとにかくサッカー好きで有名で、中国にいながらイタリアやスペイン、イギリスのプレミアまで熱狂して観ています。ですからサッカーの得意な子供は、もう2000年前後から親がサッカー留学をさせていたほどです。だから当然、英才教育を受けた選手がたくさん育っているはずなのですが、なぜかチームとしては低迷から抜け出せない。
これは七不思議といわれながら、誰もがその原因を知っているのです。その一つが、少し人気が出るとすぐに皆がちやほやするため選手が育たないこと。そしてもう一つの問題が、サッカー界全体が八百長に汚染されてしまっていることです」
その最たる例として話題となったニュースがある。河南省濮陽市で開催された高校サッカーの「市長杯」での出来事だ。
出場9校のうちの一つの試合──油田三高と油田一高の試合──で、なんと30対0という結果が出たのである。
もちろん、実力差があまりに開いていればそういう結果も不思議ではない。しかし、負けた油田三高のこの日の成績は、それまで五勝二敗と、むしろ大きく勝ち越していたのである。この試合を知った関係者は、汚染はこんなところにまで広がっているのか、と最終的にはメディアが問題にする事態になったということだ。