日本人の肝臓病で多かったウイルス性肝炎(B型とC型)は、予防と効果の高い治療薬の登場で患者数が減少しつつある。代わって問題になっているのが脂肪肝だ。
内臓脂肪は臓器の外についた脂肪だが、脂肪肝は肝臓の中に脂肪が蓄積する。脂肪肝になると脂肪が蓄積するだけではなく、進行すると肝臓に炎症が起こり、細胞が破壊される。細胞の破壊と再生を繰りかえすうちに、肝臓の線維化が進み、肝硬変や肝がんを発症することもあるので注意が必要だ。
新百合ヶ丘総合病院(川崎市)消化器・肝臓病研究所の井廻道夫所長に話を聞いた。
「脂肪肝の主な原因はアルコールと肥満、それに糖尿病です。特に肥満と脂肪肝は相関があり、肥満とされるBMI(体格指数)25以上では、約50%が脂肪肝となっています」
脂肪肝は、アルコール性と非アルコール性に分類される。1日20グラム以上のアルコールを摂取している場合、アルコール性と診断される。非アルコール性脂肪肝の約20%が、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)という進行性の疾患に移行する。
NASH患者の5~10%が10年以内に肝硬変になり、肝硬変になると年率約2%で肝がんを発症すると推計されている。また肝疾患以外の原因による死亡のリスク、特に循環器疾患による死亡のリスクも高まることがわかっている。
脂肪肝は、健康診断の超音波検査で指摘されることが多い。しかし、超音波検査では肝臓内に30%以上の脂肪が蓄積されないと診断が難しい。肝臓内の脂肪は5%以下が正常とされており、超音波検査では早期に脂肪肝を見つけることが難しいのだ。さらに肝臓の線維化の進み具合も通常の超音波検査ではわからない。
2016年10月、新百合ヶ丘総合病院では人間ドックのオプションとして日本初の脂肪肝ドックを開設した。ドックではMRエラストグラフィーを用い、肝臓内の脂肪蓄積量や肝臓の硬さを数値と色で示すことができる。MRエラストグラフィー検査は、通常のMRI検査のように横になり、専用の器具を腹部近くにおき、空気振動によって肝臓を振動させながら撮像する。