戌年の初めに相応しい注目製品がいよいよ1(ワン)並びの1月11日に発売される。ソニーが12年ぶりに発売する犬型の家庭用ロボット、新型「aibo(アイボ)」だ。
先代アイボは日本初のエンターテインメントロボットとして1999年に発売。愛くるしい動きと飼い主を認識するコミュニケーション機能が人気を呼び、累計15万台を販売するヒット商品となった。
ところが、事業としては不採算だったため、2006年に惜しまれつつ生産が打ち切られた。後に、開発に携わったソニーOBがボランティアでアイボのメンテナンスや修理を引き受けていたことも大きな話題に。それだけペットと同様、アイボを長年大事にしてきた所有者が多かったのだ。
「先代アイボの生産中止は、ソニーがソニーらしさを失っていった時期と重なる」と振り返るのは、『経済界』編集局長の関慎夫氏である。
「当時、業績低迷に苦しんでいたソニーは、ハワード・ストリンガーCEOのもと、とにかく利益最優先で、将来の事業の芽をどんどん潰していきました。
世界初の有機ELテレビを2007年に発売しながらも3年後に撤退したこともそうですし、アイボの生産中止はソニーが『普通の会社』に堕ちた象徴だったといえます」(関氏)
だが、今のソニーは違う。2018年3月期決算で、じつに20年ぶりとなる営業最高益を見込むなど業績が回復。新型アイボの開発は、〈人々の好奇心を刺激する会社であり続けることが、ソニーのミッションであり、存在意義だ〉と語る平井一夫社長のトップダウンで、2016年夏より開発が進められてきた肝入り事業だ。
「業績が回復しているといっても、利益の源泉はスマホなどに搭載されるイメージセンサーなど半導体事業の好調によるもので、かつてのように自ら市場を開拓し席巻するエレクトロニクス商品は久しく生まれていません。
そのため、多くのソニーファンは『業績だけではソニー復活とはいえない』と思っています。アイボ復活はそうした声に応えるものとして力が入っているのです。
ソニーにしか作れない、作ろうと思わない商品を世に送り出すことで世のソニーファンを増やしていく。つまり、アイボ復活はソニーの“反攻宣言”といっていいでしょう」(前出・関氏)
その証拠に、新型アイボはわずか1年半の開発期間ながら、人感センサーやデジカメ、AI(人工知能)など各部門の垣根を超えたソニーの最新技術が存分に詰め込まれている。