昨今、クレームとその対応について問題になることが多い。が、やはり商売の基本は顧客を大事にすること、邪険に扱えばそれなりの報いを受けるが常だ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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久しぶりに「中国らしいニュース」といえば、変化の著しい中国に失礼かもしれないが、そんな印象が拭えない。安徽省合肥にある小洒落たブティックホテルでの出来事である。
70代の老夫婦が問題のホテルに宿泊中、何とネズミに噛まれてしまうという事件が起きた。びっくりした夫婦は、すぐにホテル側にクレームを入れ、対応を求めた。当然のことだろう。
ところが、クレームを受けたホテル側は何と老夫婦に対し、医療費の支払いすらしなかったというのだ。その理由は、そのまま事件を伝えた『安徽商報』(2017年11月28日付)の記事のタイトルになっている。曰く、
〈70代の老夫婦、ネズミに噛まれて文句を言うも、そのネズミを捕まえないと証拠にならないと店側に言われる)
気の毒なのは老夫婦である。
夜中の一時、まずおじいさんの方がネズミに噛まれる。ネズミに噛まれるといっても足先とか、そういった場所ではなく、何とも大胆に鼻の頭を噛まれている。そして、その約4時間後。今度はお祖母さんが噛まれるのだが、これもなぜか鼻の頭だったというのだ。
翌早朝、両親からの報告を受けて息子と娘がホテルに到着。急いで両親を病院に連れて行った。問題が起きたのはチェックアウトの時である。料金を支払うにしても納得のいかない老夫婦は、「治療費と、狂犬病のワクチン代だけでもホテルが払うべき」と主張。ホテル側の問題発言が飛び出したのはこのときである。
もちろんホテル側のこんな態度が許さるはずもなく、最終的には当該区の市場監督管理部門が動き、ホテルに対する調査が行われた。小さな賠償をケチったがために、ホテルはメディアでも大きく報じられて大きなダメージを受けたはずだ。記事は、こうした場合のホテル側の責任を弁護士に尋ねているが、それによるとこのケースでは「中華人民共和国侵権責任法」というものが適用されるということだ。