国内

認知症母を施設へ送るのは無慈悲? と母の姉に相談すると…

脳活にいいと言われる麻雀

 認知症の母の介護にあたる本誌・女性セブンのN記者(女性・54才)。もはやそれ以外に選択肢はないと考え、介護施設を探そうも“無慈悲なのでは?”と悩み、母の姉に相談したところ……。

 * * *
「母のことだけど、やはり介護施設を探そうと思います」

 今から4年前、父の急死で突然、独居と認知症という苦境に陥り、混乱が激化した母(83才)の生活をなんとかせねばと悩んだ私は、母の姉であるTおばさん(86才)に電話した。母が激やせし、部屋も荒れ、私は一刻も早く決断を下さねばならなかった。

 いや、実のところ、決断自体はできていた。私が親元を離れて25年も経つこと、受験生を抱えた共働き家族と認知症の母が同居することで起こるであろうトラブル、そしてなにより、母自身が私の家族の客人として暮らしたくないと訴えていたことを考えると、選択肢は限られていたのだ。

 それに幸か不幸か私はひとりっ子。相談する人も、反対して事態を紛糾させる人もいなかった。

 母の介護を託せる住まいを探す…たぶんこれが正解だろう。仕事なら即GO!だ。でもやはり心はモヤモヤしていた。母の本音は違うところにあるのではないか。情けを欠いているのではないか…と。

「これでいいのかな」と、今までなら母に聞いていたであろう決断を、やはり誰かに聞いてもらいたくて、浮かんだのがTおばさんだった。

 母とTおばさんは昔から仲がとてもよかったが、性格や趣味は全然違う。読書や芸術好きで静かな母に対し、Tおばさんは実に活動的。グルメで多趣味、特に麻雀はお得意で、若いころからご近所で集まってやっているという。

「脳活よ! 勘が鍛えられるの。おすすめするわ」と豪語。「Tちゃんに会うと、なんだか元気になるわね」と、母。

 母は認知症の不安も打ち明けていたようで、母の家の電話の前には、私のと並んでTおばさんの電話番号が貼ってあった。

「Nちゃん(私のこと)が幸せでいられる方法を選びなさい。それがお母さんにとっても、いちばんうれしいはずだから」

 私の話を聞くや、間髪入れず、Tおばさんは言った。長々とした説教や慰めは一切なし。それがまた、うれしかった。

 最近、Tおばさんにも認知症の診断が出たと聞いた。まさかと思う半面、母方の親戚の多くが認知症になっているので、むしろ86才まで姉妹たちの心配や支援をしてきたことに畏敬の念を抱き、大きなため息が出た。

 ところが久しぶりに親戚の食事会でTおばさんに会うと、

「ついにあたしも認知症らしいのよ。全然、自覚ないんだけど、あはははははは!」と、豪快に笑い飛ばしたのだ。

「麻雀もやってるわよ、もちろん。それからね、卓球も始めたの。おもしろいわよ~」

「Tちゃん相変わらずね~」と、母も負けじと身を乗り出し、話に花が咲いた。実に楽しそう! 八十余年の姉妹関係、話題には事欠かないのだ。

 食事会に一緒に来た従姉妹(Tおばさんの娘)によると、Tおばさんは帰途、食事会のことはすっかり忘れていたらしい。母と同じだ。

 でも一生懸命、今を楽しもうとする意欲も姉妹共通だ。そしてこれこそが、何よりの介護予防なのだとうなずく今日この頃だ。

※女性セブン2018年1月18・25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン