治安を司る警官には高いモラルが求められる。が、腐敗の根が絶えないのも事実だ。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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ここまでやって、こんな軽い刑罰で済んで良いか──。そんな声が聞こえてきそうだ。習近平指導部の下で反腐敗キャンペーンが吹き荒れる中国だが、まだまだ腐敗の根が官僚組織に張り巡らされていることを彷彿とさせる事件である。
2017年12月10日付で『新京報』が報じたのは、読者からの密告にもとづく警官の犯罪だった。
記事のタイトルは、
〈カップルのカーセックス現場を録画した補助警官 女性が農薬を飲んで自殺したにもかかわらず たった8ヶ月の懲役〉
である。
そもそもの発端は2015年の夏、河北省館陶県特別警察大隊に所属する補助警官・王華華ら4人が巡視中に不自然に道端に停車する車を発見したことだった。その中では一組の男女がまさに性行為に及んでいたのだが、王は車内の様子を自分のスマホで撮影し始めた。
撮影に気が付いた男女は驚いて行為をやめたが、王はそんな彼らに車を降りることを指示、男は後ろめたさからなのか、自ら8000元(約13万8000円)を王らに差し出し、補助警官らは受け取ったという。
男女の行為を勝手に自分のスマホで撮影すること自体が、すでに警察の任務を逸脱する行為だが、王の仰天行動はこれにとどまらなかった。
1年後、事態は大きく動いた。王が自ら撮影した動画をネットにさらしてしまい、そのことで傷ついた女性が、8月30日に警察署を訪れ、抗議の意味を込めて農薬を飲み自殺してしまったのである。
当然、王の行為は問題視され、9月に刑事拘留。同月23日には逮捕となった。だが、驚くべきはその1年後に王ら下された判決である。軽率な行為で一人の女性を死に追いやったにも関わらず、懲役8ヵ月でしかなかったからだ。これでは女性は救われない。