2017年末、久しぶりに歌舞伎界の明るいニュースがあった。二代目松本白鸚(75才、元・松本幸四郎)、十代目松本幸四郎(44才、元・市川染五郎)、八代目市川染五郎(12才、元・松本金太郎)を三代同時に襲名したのだ。三代同時襲名は37年ぶりのこと。また、二代続けての三代同時襲名は歌舞伎史上初めてだ。
そして、この三代同時襲名は「歌舞伎新時代幕開け」の序章だという声もある。この歌舞伎界新時代の旗手となるのは、市川海老蔵(40才)だといわれている。海老蔵には働きすぎの歌舞伎界において休演日を設けるよう働きかけたり、W主演を推進するなど、「働き方改革」を進めるなどの注目が集まっている。
さらに、もう1つ海老蔵が進めるのが“新たな力”の活用だ。代表的な例が憂き目に遭っていた市川右團次(54才)との合流である。
成田屋の弟子筋にあたる澤瀉屋(おもだかや)は「スーパー歌舞伎」の創設者として名を馳せた市川猿翁(78才、三代目市川猿之助)が門閥にこだわらず、一般家庭出身の役者を積極的に受け入れて育てていた。
上方の日本舞踊の家に生まれた右團次は11才で澤瀉屋の門を叩いて以降、“長男”として一門を盛り上げ、猿翁の後継者と目された。
だが、2011年に三代目の実子である市川中車(52才、香川照之)が歌舞伎界入りしたことで、右團次を取り巻く状況は一変した。
「中車の歌舞伎界入りと同時に猿翁は、一度は澤瀉屋を出ていった猿之助(当時・亀治郎)を呼び戻し、四代目を継がせました。猿翁と血縁で結ばれた中車と猿之助の登場で澤瀉屋は“親族”で固められることとなりました。それは“実力主義”だった澤瀉屋にとっては一大事でした。これによって、後継者候補筆頭だった右團次さんは徐々に活躍の場をなくしていきました」(歌舞伎関係者)
苦境に陥った右團次に手を差し伸べたのは、ほかならぬ海老蔵だった。『歌舞伎 家と血と藝』(講談社)の著者である中川右介氏はこう語る。
「海老蔵のサポートもあり、右團次は2017年1月に『三代目市川右團次』を80年ぶりに復活させて襲名。屋号も澤瀉屋から高嶋屋に変更しました。それによって自由度が増し、 以前から右團次は海老蔵が座長の公演に呼ばれていましたが、さらに距離は縮まり、今では存在感のある敵役として、海老蔵一座には欠かせない存在となった」
右團次はドラマ『陸王』(TBS系)に出演するなど、最近は歌舞伎以外の分野でも活躍を見せている。海老蔵、尾上菊之助(40才)、市川猿之助(42才)、松本幸四郎(44才)だけでなく、尾上松緑(42才)、中村勘九郎(36才)・七之助(34才)ら、「海老蔵世代」は働き盛り。歌舞伎界は収穫期を迎えている。
※女性セブン2018年1月18・25日号