大手不動産企業といえば、三井、三菱、住友などの冠がつく財閥系が群を抜いているが、収益面でそれら巨大企業を猛追している意外な中堅企業がある。『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がレポートする。
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「ヒューリック」という社名を聞いて、ピンと来る人はまだあまりいないかもしれない。同社は昨年、前身の日本橋興業からヒューリックに呼称変更して10年、会社設立から60年という節目を迎えた。ちなみにヒューリックとは、ヒューマン、ライフ、クリエイトの3つの言葉を組み合わせた造語で、れっきとした東証1部上場の中堅不動産会社である。
売上高でいえば、2017年12月期の予想が2800億円というそのヒューリックが、不動産業界で御三家といえる三井不動産、三菱地所、住友不動産の財閥系3社を追いかける、4番手に浮上しようとしている。
財閥系3社に続くのは野村不動産ホールディングス、東急不動産ホールディングスで、確かに規模では野村や東急にも及ばない(2018年3月期の両社の売上高予想は、野村が6460億円、東急が8400億円)中堅クラスのヒューリックだが、大事なのは収益。この収益面での比較となると、一気に野村や東急と肩を並べるのだ。
2018年3月期予想で営業利益、経常利益、純利益の順に数字を並べてみると、野村は760億円、670億円、440億円。東急は735億円、640億円、345億円。そして2017年12月期のヒューリックの予想が630億円、600億円、400億円。売上高比から見たヒューリックの高収益性が際立っているのがわかる。
なぜ、同社は高収益なのか。野村の場合は、マンションブランドとして高い認知度を誇る「プラウド」が牽引役となり、近年は交通至便な駅直結の「プラウドタワー」などの高価格帯マンションがよく売れた。
東急はマンションで比較すると、自社ブランドの「ブランズ」が野村の「プラウド」ほどは高くない。ただし、野村が現在注力中の大都市部での再開発事業ではリードするなど、一長一短があるのだ。
その中で、ヒューリックは分譲マンション事業を手がけていないこともあって、イメージ的にも一見、地味な存在だった。では、前述した高収益はどこからもたらされているのか。その理由を辿っていくと、同社のルーツから触れなければならない。