電子書籍の市場規模も年々拡大し、デジタル化が進む一方で、アナログの極みである手帳の人気は衰えを知らない。現在、国内で販売される手帳は1年に1億冊といわれている。使われ続ける理由とは? 字幕家・戸田奈津子さんに“命綱”だという手帳について語ってもらった。
◆走り書きした若き日のトム・クルーズの言葉
「クレジットカードや保険証からハリウッドスターたちの生のコメントまで、私の生活の全てがここに入っています」
手帳を落としたら生きていけないと戸田さんは笑う。
「私は物をなくす名人だから薄くて軽い手帳ならば、すぐに紛失してしまったでしょう。だけど幸い、これは重たいから、鞄に入っていないとすぐにわかる。使い始めてから30年以上経ちますが、1日も手放したことがありません」
30年モノの手帳は、あの大御所監督から贈られた。
「スピルバーグ監督の『E.T.』(1983年)が封切りになったとき、字幕の仕事をして、そのご縁でいただきました。以来、中身のスケジュール用紙などは入れ替えますが、カバーはそのまま使い続けています」
ハリウッドスターの本音も綴られている。
「例えば、駆け出し時代を語ったトム・クルーズの言葉『Go big or go home』。『成功してビッグになれないのならば、夢を諦めて家に戻れと自分にいいきかせていたんだ』と聞いて、メモしたんです。ここにはそんなかけがえのない思い出がたくさん詰まっています」
◆「ありがとう」と言いながら破る
一方、エステの施術、セミナーや講演会、執筆、取材と多種多様な仕事を同時進行でこなす美容家の佐伯チズさんは大きなカレンダー、ノート、手帳の3点セットで予定を徹底管理している。
「1つ予定が入ったら、絶対に忘れないよう3冊全部に書き込みます。とくによく使うのは、いちばん大きなカレンダー。エステのお客さんから予約が入ったらカレンダーを見ながら確認し、赤いマジックペンで大きく書き込む。講演などで出張するときは小さな手帳を携帯します」
マネジャーがおらず、スケジュール管理をひとりでこなす佐伯さんにとって手帳は日程を書き込むだけのもの。
「だから、日記や格言のメモは書きません。ひたすら予定だけをびっしり書いて、1か月が無事に終わったら『今月もありがとうございました、来月もカレンダーが真っ赤になって1人でも多くの女性がきれいになりますように』と言いながら破り捨てていくのが、私のスタイルです」
※女性セブン2018年1月18・25日号