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相撲協会理事選 注目すべきは親方株の所有者

部屋の継承にも様々な形がある(共同通信社)

 日本相撲協会では、2年に一度の理事選が近づくと、存在しながら誰も襲名していない“空き株”を襲名するためにベテラン力士の引退が相次ぐのが慣習だ。ただし、引退した力士が親方となった時、自らの意思で理事選に「1票」を投じられるとは限らない。「借株」という慣習の存在が、事態を複雑にする。

「相撲協会が2014年に公益財団法人化された際、年寄株の売買は表向き禁じられました。しかし、実態としては退職した元年寄などが所有権を持ったまま、後継者から指導料などの名目で“家賃(名跡使用料)”を受け取っているケースがある。それが『借株』です」(若手親方の一人)

 たとえば、昨年末に翔天狼が襲名した「春日山」は、借株であるために大トラブルに発展した過去を持つ年寄株だ。

 先代の春日山親方(元前頭・濱錦)が、先々代の春日山親方(元前頭・春日富士=故人)から借りていた年寄株を買い取る交渉が決裂し、法廷闘争に発展。2016年8月、東京地裁は元濱錦に名跡証書を受け取る対価として1億7160万円を支払うよう命じている(高裁で和解)。

「億単位の額を一度に払える引退力士はほとんどいないので、多くが借株となる。借株の場合、理事選の投票では“所有権”を持つ人物の意向が優先されるのです。

 今回の元翔天狼が継承した『春日山』も借株で、元春日富士の遺族が所有しているとされます。翔天狼は出羽海一門の力士でしたが、春日富士は時津風一門の力士だったので、この『1票』は時津風一門のものになる。しかも、春日富士の遺族の意向で反貴乃花サイドの票に回されると見られます」(ベテラン記者)

 つまり注目すべきは残る空き株の“所有者”なのである。残る5つある空き株のうち3つは、現役力士が所有している。

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