金融・ファイナンス(Finance)と技術・テクノロジー(Technology)を組み合わせた造語フィンテック(FinTech)とは、ITを使って創出される金融サービスのことだ。世界で注目の新サービスで成長分野とみられている。経営コンサルタントの大前研一氏が、なぜ日本がフィンテックで世界に遅れをとっているのかについて解説する。
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メルカリは昨年11月、金融関連の新規事業を行なう子会社「メルペイ」を設立した。メルカリと連携した金融サービスを展開すると思われるが、もともとメルカリは商品を売っても代金が届かないトラブルを防ぐために利用者の売上金を一時的に預かっている。なので、それを活用したモバイル決済サービスを考えるのは当然だろう。
中国のeコマース最大手アリババが「アリペイ(支付宝)」を、SNS最大手テンセントが「ウィーチャットペイ(微信支付)」を作ったのと同じである。
ところが日本の金融当局は、メルカリ内にとどまる売上金を別の商品の支払いに充てられる仕組みなどが金融庁への登録が必要な「資金移動業」にあたる可能性があるとして、株式上場を目指すメルカリに待ったをかけている、と報じられている。このためメルカリは出品者が売上金の支払いを求められる期間を1年から90日に短縮したり、売上金をいったんポイントにした上でメルカリ内で1ポイント=1円で使えるようにする仕組みを導入したりと対応に苦慮している。
結局、アリペイのような21世紀型の新ビジネスは、日本では既存業者や金融当局に厳しく規制されてしまうのだ。このままでは、これから日中間のEC(電子商取引)とフィンテックの“進化”の差は、ますます開いていくだろう。
※週刊ポスト2018年1月26日号