注目作が目白押しの今クールの幕が開いた。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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話題のドラマ『anone』(日テレ系水曜22時)のキャッチコピーは「私を守ってくれたのは、ニセモノだけだった。」そのコピーが示すように、ニセモノにまつわる出来事がおこりそこから真実の人間愛を見つけていく物語のようです。
主人公は、家もなく家族もいない天涯孤独の19歳・辻沢ハリカ(広瀬すず)。偶然、一人暮らしの老女(田中裕子)と出会い暮らすようになる。
脚本は坂元裕二氏のオリジナル。前作『カルテット』の大反響もあってか、今回のドラマも「闇だからこそ、見える光がある」「一瞬たりとも目も耳も離せない」「中身の濃い内容」といった感想を見かけます。
でもこのドラマ、どこか過剰すぎないでしょうか?
第1話、19歳のハリカがガスマスク姿でバイトしているシーンが映し出されました。孤独死した住人の部屋等を掃除する特殊清掃の仕事という。床の上には亡くなった人の痕跡まで描き出された。
そのハリカが暮らすのはネットカフェ。カフェ難民の女の子たちが札束(実は偽札)を奪い合い、相手をスタンガンで攻撃するという描写も。
そしてハリカが幼少時にいた施設は、子供が死ぬほど酷い虐待をしていた問題施設だと明かされました。
一方、余命半年と宣言された持本舵(阿部サダヲ)と放火の罪で服役していた青羽るい子(小林聡美)が出会い意気投合して、死に場所を探すことに。
第2話は、その持本と青羽が勝手に他人の家に入りこみ、家を荒らし偽札を盗もうとし、目撃したハリカは体を拘束されテープで口封じで誘拐され……。
ドラマが描こうする「疑似的家族」というテーマは興味深い。それだけに、過剰な部分が悪目立ちしている気がするのは私だけしょうか? ドラマの中には普通の人が圧倒的に少ない。日常シーンが数えるほどしかない。脚本家の意欲ゆえなのか、他の人がまだ描いていないシーンをとオリジナリティを追求するがためか。それとも、刺激度を上げて視聴者の関心を惹こうとしているのでしょうか?
「…坂元さんには物語性を大切に取り組んでもらっています。傲慢なことを言うと、昨今のドラマの中でちゃんとした作品性を問うドラマを届けたいからです。視聴率を獲るためだけの仕事はしたくない」とプロデューサーの次屋尚氏は語っています(マイナビニュース2018.1.10)。
昨今のドラマの中で「ちゃんとした作品性」とは何か。少なくとも、刺激盛りではないはず。「視聴率を獲るためだけの仕事はしたくない」というプロデューサーの言葉を信じたい。