【著者に訊け】瀬尾まなほさん/『おちゃめに100歳! 寂聴さん』/光文社/1404円
【本の内容】
〈わたしが7年間ともに生きている先生は、止まることなく、ずっと走り続けている。過去も見ずに前だけを見て。一度切りの人生を後悔しないように、自分の心のままに正直に生きることを教えてくれた。後どのくらい、一緒にいることができるか分からないけれど、いつか離れ離れになるその日まで、わたしは先生とずっと一緒にいたい〉──66歳年の離れた先生こと瀬戸内寂聴さんとの日常とは。笑いの絶えない日々と、次々に襲い来る病。その献身ぶりと年の差を感じさせない友情関係に胸が熱くなる。
初めての著書、『おちゃめに100歳!寂聴さん』を出した瀬戸内寂聴さんの美人秘書、瀬尾まなほさんと、寂聴さんとのあいだではいつも笑いが絶えない。
「この人に初めて会ったとき、『ああ、いい子だな』と思ったの。のびのびしてて、話を聞くと、とんちんかんで」
笑いながら話す瀬戸内さんに、「先生、もっといいことを言ってくださいね」と釘をさしながら、瀬尾さんも笑いころげている。
「朝起きたときから笑ってるの。だってこの人、『おはよう』ってスカートをまくり上げてパンティ見せるのよ。笑うでしょ?」
下着の柄が可愛かったから、という衝撃のエピソードは瀬戸内さんの小説『いのち』にも紹介されている。66歳の年齢差を感じさせない2人のやりとりは、息の合った漫才の掛け合いのよう。
午前9時前に寂庵へ出勤すると、瀬戸内さんを起こすことから瀬尾さんの仕事は始まる。
「だいたい起きてますけどね」(瀬戸内さん)
「…起きてないです。部屋の電気つけたまま二度寝して、『7時に起きたよ』って」(瀬尾さん)
瀬尾さんが寂庵に就職して7年になる。胆のうがんの手術から生還、95歳の今も休みなく活動する寂聴さんの日常はハードで、秘書の仕事もタフでなければ務まらない。本ではスケジュール管理や締切の催促、食事作りや病院の付き添い、時に顔のマッサージや頭を剃ったりもする日常が、ユーモラスに、敬愛を込めて描かれる。
寂聴さんの顔をマッサージしながら、「鼻筋がない」と大胆な指摘をする瀬尾さんは、大作家を前にしても初めから「緊張はしなかった」と言う。とはいえ、面と向かって言えないこともあり、そういうときは正直な気持ちを手紙に書いた。手紙を読んだ寂聴さんが彼女の文才を発見、本の出版につながる。今では毎月、全国の地方紙に「まなほの寂庵日記」を連載中だ。
「書くことがこんなにも自分にとって喜びになるとは思ってもいませんでした。先生のおかげで自分の世界や可能性が大きく広がりました。たとえいつか訪れる先生との別れが来ても、この経験はきっとこの先、私を支えてくれると思います」
撮影/黒石あみ
※女性セブン2018年2月1日号