苦味を嫌う、あるいはオヤジの飲み物的イメージを持つ若年層が「ビール離れ」をし、価格的にも安いRTD、要は缶チューハイに流れていると言われて久しい。だが、そんなビールに対するイメージも今年4月から変わっていくかもしれない。『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏が、各社の新ビール戦略を追った。
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29年ぶりに、「スーパードライ」(アサヒビール)の販売数量が1億ケース(1ケース=大瓶換算20本)割れ──。この数字が、ビール業界が置かれた厳しい状況を端的に表している。ビールの銘柄別ブランドで断トツ首位の「スーパードライ」の販売は、昨年が9794万ケース(前年比97・9%)、さらに今年も9550万ケース(同97・5%)を予想するなど、下げ止まりがいつになるか、まだ見えない。
さらに追い討ちをかけるように昨年6月、ビールの安売り規制がかかってビールの店頭価格が上昇、そして今春からは、10年ぶりに飲食店向けの業務用ビールも値上げが待っており、ビールメーカー各社はなお、向かい風を強いられる。
強いて言えば、ビールの酒税率一本化によって、少なくても税金面ではビール、発泡酒、第3のビールが横並びになることがフォローの風。とはいえ、そうなるのは2026年(2020年から段階的に行われる)と、まだだいぶ先のことだ。
前述した安売り規制は、いわば“官製規制”のようなものだが、ならばムチだけでなく、アメも与えようということか、この4月からビールの定義変更が行われる。内容は、これまでは麦芽使用比率が67%に満たないとビールとは認めなかったものを50%以上あればビールと認定し、併せて多様な副原料を使えるようにしたもの。
「たとえば我々が注力し、また先駆けてリードしてきたクラフトビール。クラフトビールの酒税はこれまでビールとしての酒税を払ってきましたけど、品目としては発泡酒扱いでした。それが、4月以降は正々堂々とビールになるわけです」(布施孝之・キリンビール社長)
ビールの定義変更とは、見方を変えればこれまで発泡酒扱いなのに酒税だけは高かったクラフトビールが、大手を振ってビールと宣伝できる変更だともいえる。ということは、各社が今後、順次出していくであろう定義変更による新しいビールは、クラフトビールの品目数が増えることとほぼ同義と考えていい。
では、ビール4社の定義変更に関わるスタンスや考え方を見ていこう。