撮り鉄というと、鉄道の撮影が好きな人なんだろうなという穏やかな印象よりも、乗客や周辺住民に迷惑をかけ、運行にも支障を出しかねない迷惑な存在というイメージが強くなっている。世間を敵に回してまで撮影を続けるのはなぜなのか。自身も撮り鉄であるライター・カメラマンの小川裕夫氏が、写真・カメラ誌『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)・佐々木広人編集長へのインタビュー取材から、迷惑撮り鉄をなくすための方策を考えてみた。
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鉄道撮影を趣味とする、いわゆる「撮り鉄」のマナーが悪すぎるという指摘がSNSなどで相次いでいる。自分が気に入ったアングルで車両の写真を撮るために、乗客を怒鳴りつけたり、通りがかった子どもの腕を引っ張ったり、果ては駅員や運転士を邪魔者扱いして罵倒するといった粗暴な行為が動画や写真とともに拡散され、広く世間から批判されている。ともすれば事故にも繋がりかねない行動も少なくないためか、鉄道会社も様々な工夫をこらした対応をするようになってきた。
JR東日本が昨年5月1日に運行を開始させたクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」は、豪華なデザイン、優雅な旅をコンセプトにして注目を集めた。
出発式は上野駅で催行されたが、その様子をカメラに収めようとする撮り鉄が上野駅の13番線ホームに殺到した。
JR東日本は乗客の安全確保のために入場規制を実施。また、乗客の旅行気分を害さないように、14番線ホームには回送列車を配置して撮り鉄ブロックを発動。JR東日本の徹底した撮り鉄対策に、集まった撮り鉄は不満を爆発させた。
本来なら、鉄道会社にとって鉄道ファンは”客”だ。しかし、鉄道会社でもマナーの悪い鉄道ファンを嫌悪する風潮が強まっている。
あくまでも、マナーの悪いファンは一部に過ぎない。それでも、今年に入ってからだけでも撮り鉄の暴走はあちこちで報告されている。
千葉県・いすみ鉄道は、1月6日にキハ52を運転することで鉄道ファンを集めた。多くの鉄道ファンが集まれば、少なからず暴走するファンもいる。いすみ鉄道では、線路内に侵入し、列車の運行に支障が出る線路際に三脚を立てて撮影しようとする撮り鉄が数人いた。接触事故を起こしかねない危険な場所だ。いすみ鉄道社長は、その暴挙に憤慨。翌日のブログで迷惑な撮り鉄を晒しあげたうえ、「阿呆連中」と指弾した。
撮り鉄の乱行は、もはや鉄道ファンの仲間内だけで知られているという状況にとどまらない。テレビや新聞などでも報道されて、世間に広く知られるようになった。特に団体行動していると、見境がつかなくなるせいか暴走するケースが目立つ。私も実際にそうした場に何回か遭遇している。特に印象に残っているのが、尾久駅に隣接する尾久車両センターで開催された「ふれあいフェスタ」での一コマだ。
広大な操車場では、普段は間近で見る・触ることができない機関車などが並ぶ。チビっ子連れの家族もたくさん来場するので、珍しい車両の前では親子連れが記念撮影の順番待ちで列をなしていた。
自分の世界に没入し、自分が理想とする列車写真を撮る。そのためには親子は邪魔な存在なのだろう。大声で親子連れを威嚇し、排除する。撮り鉄の行為を注意しても、逆ギレされて危害を加えられることもある。普通の親子は恐怖に駆られてしまい、静かに退散するのが常だ。
こうした光景は一部のファンによる暴走だが、その一部によってまっとうな鉄道ファンも丸ごと世間から偏見の眼に晒される。そして、肩身の狭い思いで過ごしているのだ。
そんな撮り鉄の悪行が流布する中、今月20日に発売された『アサヒカメラ』(朝日新聞出版)2月号が衝撃的な内容だとして話題を呼んでいる。