どれだけ注意をしていても、100%防ぐことは不可能なのが交通事故だ。バスを降りたら自転車と軽い接触してしまった事故の場合、罪に問われるのは誰か? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
バスを降車した際、歩道を走ってきた自転車と衝突。ケガは負いませんでしたが、ヒヤリとしました。この場合、罪に問われるのは自転車を漕いでいた人間か、「後ろから自転車が近づいています」といったアナウンスをしなかったバスの運転手か、注意を払っていなかった自分か、誰の責任になるのでしょう。
【回答】
複数の者が関係して起こした事故に関しては、民法に共同不法行為の定めがあります。学説は分かれていますが、判例通説では複数の者の行なった行為が「故意または過失で他人の権利や利益を侵害する」という不法行為の要件を満たしていて、ほぼ同時にそれらの者の行為から客観的に見て、一つの、あるいは不可分の損害を生じれば成立するとされています。共謀など意思を共通にすることは不要です。共同不法行為では、被害者は加害者全員に連帯して損害賠償請求でき、手厚く保護されます。
歩道上を自転車通行できる場合でも、運転者は徐行して歩行者の通行を妨げてはならない義務があります。ましてバス停留所の横を通過するときは前方を注意し、降車客の動静に注意して停止・徐行すべきです。相当なスピードで通過し、降車客にぶつかってケガをさせれば不法行為になります。
他方、バスの運転手は乗降客の安全に配慮する注意義務があり、降車時には乗降口の前後に通行する自転車の有無などを確認し、その存在を認めたときには扉を開けない措置も必要です。したがって、自転車の走行が発見不可能であった場合を別にすれば警告なしに降車させ、衝突事故が起きた場合には過失があり、バス会社に使用者責任が生じます。