今年から「配偶者控除」の制度が大きく変わった。これまで問題となっていたのは、「103万円の壁」だった。妻の年収が103万円以下だと、夫の所得から最大38万円が控除された。夫の年収が600万円の場合、妻の年収が103万円以下だと所得税・住民税を合わせ約7万1000円税負担が軽くなっていたため、多くの妻は年収103万円を超えないよう仕事量を調整してきたのだ。
この「103万円の壁」が、今年から「150万円の壁」に引き上げられた(夫の収入が1220万円以下の場合)。収入がこの額を超えると控除額は段階的に縮小され、年収201万円を超えると受けられなくなる。
しかし、これで「妻は『壁』を気にせず150万円まで働ける」と理解するのは間違いだ。都内在住のA氏(66)は定年後の再雇用で収入が半減。頼りにするのは宅配のパートをする妻の収入増だ。
これは「社会保険の壁」を考慮して仕事をセーブするより、家計を助けるため「妻のパートで少しでも多く稼いでほしい」ケースだ。妻の勤め先が従業員501人以上の会社なら、年収が106万円になると手取りが90万円まで一気に減る。
では、いくらまで年収を増やせば保険料負担によるマイナスを補って「損益分岐点」を超えられるのか。
「年収125万円になると“働き損”は解消されます。逆にいえば、年収106万円以上125万円未満だと、“壁”を超えないほうが手取りが多かった、という状態に陥ってしまう」(税理士の落合孝裕氏)
「130万円の壁」がある従業員500人以下の会社に勤める場合の損益分岐点は、年収156万円。すなわち、年収130万円以上156万円未満が「働き損」になる。A氏のような場合、「とくにこの手取り回復の分岐点を意識したほうがよいでしょう」(同前)。
一方で、妻の年収が「150万円の壁」を超えると配偶者控除が縮小されるが、「妻が年収156万円以上になれば、妻の手取り増のほうが大きく、夫婦の収入はプラスになる」(同前)のだ。