なぜがんは転移して再発してしまうのか。日本医科大学武蔵小杉病院の勝俣範之先生が教えてくれた。
「再発というと一般的には“遠隔再発”を指します。手術で腫瘍を取り除いても、“浸潤”といって見えないがん細胞が血管やリンパ管に入り込んでいることがあり、血液やリンパ液を介してがん細胞が体中に流れてしまうことで、別の部位にがんができてしまうことがある。これが遠隔再発です」(勝俣先生、以下「」内同)
“再発のしやすさ”は、がんのステージよりもがんの部位によって異なるという。
「あくまで一般論ですが、肺がん、食道がん、すい臓がんはステージI、IIでも再発転移することが多い。一方、乳がんや子宮頚けいがんはステージI、IIの場合でも再発は少ないです」
つまり、“早期発見・早期治療”だけでは再発防止には限界があるということ。また、定期的にがん検診を受けていても早期発見できないこともある。
「がんには進行のスピードが速いものと遅いものがあり、発見した時点ですでにかなり進行していることもあります。検診率向上、早期発見も確かに重要ではありますが、それだけで生存率が高くなるわけではありません」
勝俣先生は「最も大事なのは治療をきちんと受けること」だと続ける。
「多くのがんには、科学的根拠をもとに推奨される『標準治療』があります。手術や抗がん剤などの化学療法、放射線治療などがそれに当たり、これを受けないと再発率は高くなります。逆に乳がんや大腸がんなどは化学療法によって再発予防になることがわかっているんです。どの治療をするかはがんの部位や状態によって異なり、たとえば血液やリンパ管に入り込んだ浸潤したがん細胞は手術で切除できないので、抗がん剤や分子標的薬を使った化学療法も併せて行うことになります」
しかし、標準治療を受ける人の割合は低く、昨年11月に国立がん研究センターが発表した資料によると、肺がんの術後化学療法を受けた人の割合は44%、大腸がんは56%だった。
「再発してしまうと治療の選択肢が限られてしまうことが多く、最初にがんと診断されたときにどんな治療をするかによって、再発率を含めた予後が変わってきます。食事や運動など生活習慣を整えることも大切ですが、まずはその前に、標準治療をしっかり受けてほしいですね」
※女性セブン2018年2月15日号