植物の力を利用したリハビリテーションに「園芸療法」がある。植物を育てることの満足感や達成感を体験することで心身機能のケアをするというものだ。
多様な植物を扱う園芸療法だが、さすがに真冬は収穫物が少ない。恵泉女学園大学准教授で、NPO法人日本園芸療法研修会代表の澤田みどりさん主宰で地域の高齢者対象に園芸療法の実践を行う「ベルガーデン水曜クラブ」でも、冬季は室内で植物に関係するプログラムを行うという。1月17日、神奈川県横浜市の踊場地域ケアプラザで行われた室内プログラムにお邪魔した。
集まったのは80~90代が中心の女性8人。10人のスタッフ・ボランティアの中にも80代の男性2人がいて、会場の平均年齢はやや高め。杖を使ってゆっくり歩く人もいるが、毎週の開催日を楽しみに参加しているのが、活気のある表情からも伝わって来る。
この日のテーマは「極寒の中、南国の植物ティリーフを使ったハワイアン・レイ作り」だ。長さ50cmほどもある葉を編み、途中にデンファレの花を編み込んで仕上げる。
指先を細かく使い、初めて見るレイの構造を見よう見まねで作るのは、相当難しいのでは…と50代の記者が懸念するも、みなさん驚くほどの集中力で難なくこなす。
「ティリーフは南国特有の葉で、重ねてスカートのように身につけたり、笹のように肉や魚を包んで蒸し料理にも使うんですよ」と、フラダンス衣装のスタッフが解説すると、
「ハラン(スズラン亜科の常緑多年草)みたいだね~」と、さすが園芸療法の参加者!
忙しく手を動かしながらも、10年近く前に家族で行ったハワイ旅行の話から、近所の100円均一店のマカダミアナッツチョコが好きだという話まで、ハワイつながりのおしゃべりも賑にぎやか。
わずか30分ほどでレイを仕上げると昼食。この日は水曜クラブで収穫した玉ねぎ入りのかき揚げだ。
「みなさんが育てた玉ねぎ、おいしいですね」と言うと、「いろいろ育てているからね。でもこれは料理がうまいんだよ」と、照れて笑う87才!
「ここは園芸好きだけでなく、家族にすすめられて参加したという人もいますが、そんな人こそ“ハマり”ます。リハビリのための作業というより、植物を育てて採って、食べたり飾ったりして楽しむ。五感をフルに使った生活力そのものなのです」と澤田さん。
その充実感は参加者たちからひしひしと伝わってきた。
※女性セブン2018年2月15日号