小室哲哉(59才)が引退を宣言した。『週刊文春』で報じられた不倫疑惑に端を発した、突然の引退劇は小室本人の進退だけでなく、「不倫報道の是非」についてまで報道は発展し、騒動はいまだ収まる気配がない。
1990年代半ば以降、ヒットチャートの上位は小室がプロデュースした“TKサウンド”が独占していた。ドラマや映画の主題歌も、CMソングも、カラオケで歌われるものも、すべて彼がプロデュースした“小室ファミリー”ばかり。なぜこれほどまでに小室の音楽は受け入れられたのか。音楽評論家の鹿野淳氏が解説する。
「小室さんが出てくる以前、日本の大衆音楽は、演歌的な浪花節に端を発した歌謡曲でした。小室さんはそこに、クラブやディスコなどヨーロッパで流行っていたリズムを大胆に持ち込み、“ポップミュージック”に変えたのです。哀歌中心のシーンで、ポジティブさや高揚感をパーティー感覚で大衆に提示して爆発的に受け入れられたのは革命的だった」
当時はバブルの崩壊後。若者たちは会社に入ることもままならない就職氷河期を迎えていた。そんな明日すら見えない中だからこそ、“TKサウンド”が心に刺さったのだろう。曲とともに、歌詞にも若者を引きつける力があった。小室がプロデュースしたのは、歌姫たちだけではない。
ダウンタウン・浜田雅功(54才)とはバラエティー番組での共演がきっかけで意気投合し、ユニット「H Jungle with t」を結成した。
1995年に発売した1stシングル『WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント』は200万枚を超えるヒットを記録し、紅白歌合戦にも出場した。
前出の鹿野氏が回想する。
「これこそ、小室さんのプロデューサーとしての資質のすべてだと思います。日本のトップタレントですが、まったく音楽と無縁だった浜田さんを歌わせてチャート1位を獲らせた。しかもきっかけは浜田さんが言った“ぼくにもヒット曲をプロデュースしてください”という冗談のような一言。さらに当時最も精鋭的な“ジャングル”というアンダーグラウンドで流行っていたリズムを前面に掲げ大ヒットさせた。あの手さばきには、あっけにとられてしまいました」
すでに若者から絶大な人気があったダウンタウンだが、この大ヒットでお笑い番組を見ない世代からも周知され、日本を代表するお笑いコンビとなった。
「あの頃、女の子は安室ちゃんに憧れて茶髪にミニスカ、ロングブーツという“アムラー”スタイルを目指しましたけど、浜ちゃんのスカジャンにダボダボのデニムというアメカジスタイルが男の子の最先端のファッションで“ハマダー”と呼ばれていた。当時つきあっていた彼もハマダーでしたね(笑い)。決してイケメンじゃない浜ちゃんがファッションのアイコンになったこと自体が小室さんの力だと思うと、スゴいですね」(30代専業主婦)
時代の転換期には、その時代を象徴する音楽も変わるという。昭和から平成へと変わった年には、美空ひばりがこの世を去った。小室が引退を発表したのも、元号の変わり目だ。これから平成の世を思い返すとき、いつも私たちの胸の中では“TKサウンド”が鳴り響くのだろう。
※女性セブン2018年2月15日号