「医師の処方だから」と安心して飲んでいた薬が、実はあなたの身体を蝕んでいるとしたら──。名医が医療界の「不都合な真実」を明かす。
日本では30歳以上の2人に1人が高血圧とされるが、血圧を下げる薬としてもっとも多く処方されているのがブロプレスやミカルディス、ディオバンなどのARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)といった降圧剤だ。だが、生活習慣病治療が専門の新潟大学名誉教授・岡田正彦医師は、注意を喚起する。
「確かにARBは血圧を下げる効果があり、脳卒中の発生率も下げますが、肝心の死亡率を下げるというエビデンスがまだ存在しません。新しい薬なので、長期服用でどんな影響があるかわかっていないのが実情です」
ARBの副作用として挙げられているわけではないが、一般的に、血圧が下がり過ぎると、血管が詰まって脳梗塞を発症するリスクが高まるという。
「私が高齢の高血圧患者に処方するのは、『サイアザイド系利尿薬』です。古いタイプの薬なので、どのような使い方をすれば、どんな副作用が生じるかもわかっています。そのため医師の側でコントロールしやすく、患者にとっても安全です」(岡田氏)
“新薬”と聞くと、従来にない画期的治療を期待してしまうが、長期の服用で身体にどのような影響があるかわからないというリスクもある。
「脳梗塞や心筋梗塞などの再発予防では、抗血栓薬のプラビックスも広く使われてはいるものの、脳梗塞の予防効果についてはきちんと証明されていません。血液をサラサラにする効果がありますが、同程度に出血を起こすリスクがあり、脳出血などの副作用が指摘されています」(岡田氏)
ただし、プラビックスは心筋梗塞のステント治療の後に服用すると、再発を防ぐ効果があることは確認されているという。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号