平昌五輪に北朝鮮が急遽参加することが決定し、にわかに注目が集まっている。朝鮮民主主義人民共和国をめぐる最大級の謎、“建国の父”たる金日成をめぐる“ニセモノ説”について、評論家の呉智英氏が論考した。
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2014年夏、朝日新聞は朝鮮人慰安婦についての従来の記事の取り消しと謝罪を発表した。これによって同紙は数十万部の部数減になり、世に流通する朝鮮問題(南北ともに)の言説にはフェイクが相当あるとの疑念が広まった。こうしたことがネット右翼や嫌韓ブームを勢いづかせることにもなっている。そうであればネット右翼や嫌韓風潮を批判する側が朝鮮問題の隠された真実を率先して明らかにしなければなるまい。
北朝鮮の初代最高指導者金日成についての疑惑もその一つである。
昨年12月8日付産経新聞に興味深い記事が出た。モスクワ支局長遠藤良介の連載記事「百年の蹉跌―ロシア革命とプーチン」は、ロシヤ革命に関連させて北朝鮮成立事情に言及している。
「『金日成』はもともと抗日戦の伝説的英雄の名前だった。ソ連が、この英雄とは別人の金成柱という無名の大尉を連れてきて『金日成』とし、北朝鮮の指導者に仕立てたのである」
つまり、金日成ニセモノ説である。我々のよく知る金日成は金日成ではなく、金成柱という人物がなりすましていた、というのだ。
この話は一部では知られているものの、今に至るまでその検証も含めて秘匿されているに等しい。北朝鮮においてのみならず、日本のマスコミや研究者においてもである。最近やっと金日成の本名は金聖柱であると語られだした。「成柱」と「聖柱」は日本語でも朝鮮語でも読みは同じだが、字面は「聖柱」の方が威厳がある。