長らくスキーは不況に喘いできた。『レジャー白書2017』によれば、スキー人口は最盛期だった1993年の1770万人をピークに、2016年は330万人と約5分の1にまで減少。国内約760か所あったスキー場の37%が閉鎖・休業したという報告もある。しかし、ここにきて光が差し込んできているという。
スキー場の運営やコンサルティングを手掛ける「日本スキー場開発」では、運営する8施設の来場者数が昨年12月、前年同月比で6%増加したという。プリンスホテル&リゾートでも、子供を対象にした無料の『キッズフリープログラム』を2012年から実施したところ、5年間で子供の来場者数が約75%も増加した。
昨年12月には、国内で14年ぶりに新しいスキー場『峰山高原リゾート ホワイトピーク』(兵庫県)が誕生と、業界全体に新たな風が吹き始めているのは間違いない。
スキーブーム再燃を何より牽引しているのが、JR東日本のスキー旅行のキャンペーン『JR SKISKI』だ。これまで本田翼、川口春奈、広瀬すず、平祐奈など、例年旬な若手女優がイメージキャラクターを務めてきたが、今年は、30年前の大ヒット映画『私をスキーに連れてって』のヒロイン・原田知世が起用された。
同作は1987年のバブル真っ盛りに公開され、空前のスキーブームを生んだ伝説の作品。舞台となった万座プリンスホテルでは、映画公開30年を記念して、当時のメニューを復刻させた。
「当時を知るお客様からは懐かしいという声をいただきますし、当時を知らない若い世代のかたからも好評をいただいています」(プリンスホテル広報部)
このスキーブームの背景にあるものは、昨今のバブル人気だろう。バブリー芸人の平野ノラのブレークに始まり、田中美奈子のボディコンCM、荻野目洋子の再ブレーク、登美丘高校ダンス部のバブリーダンスと次々とバブルにまつわるものが大ヒットしていった。
『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社刊)などの著書を持つ、マーケティングライターの牛窪恵さんの解説。
「バブル人気を受けて、40代、50代の中には青春時代を思い出し、もう一度スキー場へ行こう、連れてってとなっている人もいるでしょう。また現20代の多くはバブルの子世代にあたります。バブルを知らずともその香りは、昔から嫌いではない。スキーも“なんちゃってバブル”感覚で、当時のカルチャーを再現しながら楽しんでいる、との声もよく聞きます」
現代のスキーブームの原動力となっているものが、もう1つある。「インバウンド(訪日観光客)」である。実際、ガーラ湯沢でも外国人客が中国系からインドネシア系、欧米系と幅広く来場し、外国人向けスキー教室も盛況だった。
バブル期にはリフトに乗るにも30分待ちはざらだったスキー場。このブームが熱を帯びれば再びそんな日もやってくるかもしれない。
※女性セブン2018年2月15日号