年明け以降、多くのメディアがこぞって相続税を取り上げている。2018年度の税制改正で、相続税の仕組みが変わるからだ。編集部にも、「夫に先立たれたら、相続税はいくらかかるのか?」といった声が多く寄せられた。そんな中、今回相続法(民法)改正案で、配偶者への優遇制度が新たに示されたことで、ますます注目が集まっている。
次のようなモデルケースを想定し、妻の相続分が現行法と改正後でどう変わるのかを分析した。
・夫が死亡し、妻と子供1人が残された。
・夫の遺産は資産評価額3000万円の自宅と、2000万円の預金。
妻にはすでに現行の「税制」でも優遇措置が取られている。WT税理士法人の板倉京(いたくら・みやこ)税理士が解説する。
「遺産相続にかかる相続税は、3000万円+法定相続人数×600万円(今回の事例では4200万円)を超えた場合にかかります。ただし、妻が夫の財産を相続する場合、配偶者控除の適用を受ければ1億6000万円までは相続税がかかりません。妻は相続税において、とても優遇されているのです」
相続だけではなく、夫から生前贈与を受ける場合も、結婚して20年以上の夫婦間の贈与であれば、自宅の評価額、もしくは新たに自宅を買うための資金は2000万円まで非課税となる。相続税と相続制度(民法)は別のものであり、今回の制度改正で配偶者は二重に優遇されることになる。
さらに、改正案には「金融機関の仮払い制度」も新設。現行法下では、死後凍結された夫の口座からお金を引き出す場合、相続人全員の合意が必要だった。
夫婦の貯蓄を夫の口座に集中させていた場合、残された妻の生活に支障が出るケースが見受けられたが、改正案ではこの点を改善。葬儀費用など限られた用途の場合は、妻の意思で口座からお金を引き出すことを可能とした。
一見すると配偶者に至れりつくせりの制度改革に見えるが、注意点も存在する。相続問題に詳しい小堀球美子弁護士が語る。
「遺言書に『すべての財産を妻に相続させる』と記載していても、実際には全財産を相続することはできません。法定相続人は、最低限の相続財産(遺産の4分の1)を『遺留分』として請求することができるからです。
改正案でも遺留分の請求権は残されており、今回のモデルケースの場合、仮に妻が遺言によって全額を相続しようとも、子供から750万円請求される可能性があります」
※女性セブン2018年2月15日号