女性にとって最も“身近ながん”である乳がんは、10年生存率が80%超と高く、自身の体験を広く発信し啓発する人も多いが、残念ながら再発することもある。そして、再発の仕方によって生死を分けてしまうことがあるのが乳がんの特徴ともいえる。桜新町濱岡ブレストクリニック・濱岡剛院長に聞いた。
「再発は大きく分けて、同じ部位にまた腫瘍ができる“局所再発”と、それ以外にがんができる“遠隔再発”の2種類です。乳がんの局所再発は、乳房やわきの下に再びしこりができることをいい、遠隔再発は、肝臓、肺、骨などへの転移を指します」(以下、「」内同)
局所か遠隔かによって、重症度は異なる。
「局所再発なら、初めて乳がんと診断されたときと同じだと考えてください。がんの組織を検査して、がんのタイプや進行度に応じて手術や抗がん剤などの治療を行う。多くの患者さんが寛解に向かいます。
深刻なのは遠隔再発。基本的に、手術してもがんは取り除けないことが多く、ホルモン剤、抗がん剤や分子標的薬などを用い、それ以上がんを大きくしないことを目標に治療します。寛解は難しいですが、近年は薬の種類も増えるなど、治療の選択肢が広がり5年、10年と治療を続けながら日常生活を送っている人も多くいます」
乳がんが再発する確率はタイプや進行度によっても異なるが、遠隔再発をするのは2割未満。局所再発が1割未満で、8割以上は再発しないという。
「遠隔再発のしやすさは、診断時の進行度、がんのタイプにかなり左右されますが、部分切除か全摘出かといった手術方法は影響しません。たとえ全摘出したとしても、手術の時点で血液にがん細胞が流れていれば、転移する可能性はあります。
そこで、手術に限らず、抗がん剤などを含めた標準治療を必要に応じて受けることが大事です。がんの性格に応じた治療を受けなければ、再発もしやすくなってしまう場合があります。“生活の質”を高めることに重きをおきながら、正しい治療方法を主治医と相談することです」
※女性セブン2018年2月15日号