胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などにかかると、胃酸の分泌を抑制するタケプロンやオメプラールなどプロトンポンプ阻害薬(PPI)が処方されるが、驚くべき研究報告が出ている。柴田内科・消化器科クリニック院長の柴田実医師はいう。
「2017年7月、ワシントン大学の研究者が退役軍人の薬剤処方記録を用いて、胃酸抑制効果の高い『PPI』が処方された約27万人と、市販の胃薬にも使われる『H2ブロッカー』が処方された約7万人を追跡調査。その結果、PPIを服用した患者が服用後5年間で死亡する割合は、H2ブロッカーの患者に比べて25%高かったという研究結果が米国の医学誌で発表されました」
原因までは明らかにされていないが、PPIはH2ブロッカーよりも胃酸抑制効果が高く、下痢や肝障害、薬疹などの副作用が報告されている。特に治療効果の高い「タケプロン」は副作用も強く、肝機能値に異常が現われたり、頭痛やめまい、下痢のほか、白血球や血小板が減少する血液障害が知られている。
「高齢者の場合、必要以上に使用すると胃酸が減りすぎてしまうことがある。食道にカンジタというカビが生えるなど、殺菌力が低下して胃の中で細菌が繁殖し、細菌の逆流で誤嚥性肺炎を招く可能性も指摘されています。また、胃酸の分泌が低下するとカルシウムの吸収力が落ちるため、骨粗鬆症のリスクが上がるともいわれています」
あまり気軽に服用すべき薬ではないということだ。
「胃腸薬は医師の判断で処方できるので、風邪の時にPPIを処方する医師もいます。しかし、もし私が風邪で、胃痛もなく、強い下熱剤との併用もなくPPIを処方されたら、その医師の判断に疑問を持たざるを得ません」
※週刊ポスト2018年2月16・23日号