2016年に82億円もの興行収入を記録した『シン・ゴジラ』(東宝)は、特撮王国ニッポンの底力を内外に見せつけた。庵野秀明総監督による息をもつかせぬ展開は圧巻だったが、石原さとみが演じたカヨコ・アン・パタースン米国特使もまた、特撮ヒロインの系譜に新たな色彩を加えた。
1954年に第1作の『ゴジラ』が公開されて以来、特撮というジャンルは、世界に類を見ない驚異的な発展を遂げた。一連の東宝特撮映画に対抗するように、大映の『ガメラ』シリーズも台頭。テレビ時代が幕開けすると、『ウルトラマン』『仮面ライダー』『秘密戦隊ゴレンジャー』と、今なおシリーズが続く強力なコンテンツが次々と登場する。
そして、特撮ヒロインの役割もまた、時代に合わせて変遷を重ねた。テレビ特撮の黎明期である1960年代には、主人公(ヒーロー)を陰で支える女性隊員や家族などの協力者という役柄がほとんど。その任務も、通信やメディカルケアに比重を置く。『ウルトラマン』のフジ・アキコ(桜井浩子)や『ウルトラセブン』の友里アンヌ(ひし美ゆり子)はその代表例だ。
1970年代に入ると、ヒロイン自ら戦いの最前線に入ってゆくケースが急増する。男女の合体で変身する『ウルトラマンA』の南夕子(星光子)はもとより、変身前でもアクションを見せた『秘密戦隊ゴレンジャー』のペギー松山(小牧リサ)、生身の姿で戦う『快傑ライオン丸』の沙織(九条亜希子)や『スーパーロボット レッドバロン』の松原真理(牧れい)は、肌の露出も多く、熱狂的に支持されたのだ。
さらに1980年代以降、チームにおける女性隊員の比率が増え、有名アイドルが参入するなど華やかさを増す。特撮ヒロインは、もはやヒーローを支える紅一点ではなく、存在自体が視聴率を左右するようになっていく。
こうした流れは、アニメの発展とも常にリンクしていた。石ノ森章太郎や、その弟子の永井豪が『キューティーハニー』などで戦うヒロインを、セクシーな要素を加味した上で誌面に躍らせたことが実写版にも反映され、ヒロインの太腿や胸の谷間をダイナミックに映し出すことにつながったのだ。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号