乾燥するこの季節に大活躍の加湿器。自宅や職場でお使いのかたも多いはずだ。しかし、ひとたび管理方法を誤ると人の命を危険にさらす“殺人加湿器”となってしまうことが判明し、世間を震撼させている。
1月19日、大分県の高齢者施設で男性入所者3人がレジオネラ菌に感染し肺炎を発症、うち1人が死亡した。原因は、施設に設置されていた2台の加湿器だった。東京都環境保健衛生課の木村秀嘉さんはこう説明する。
「レジオネラ菌は、土や池の中など自然界にはどこにでもいる細菌の一種です。感染すると、悪寒や高熱といった風邪に似た症状が出はじめ、重症化すると意識障害や肺炎を引き起こし、最悪の場合死に至ることもあります。特に乳幼児や高齢者など、抵抗力の弱い人は注意が必要です。
レジオネラ菌は、水に菌が繁殖し、その水が細かいミスト状になり、それを人が吸い込んだ時、肺に入って感染するケースがほとんどです。例えばこれまで、感染例として入浴施設のジャグジーやシャワーなど、霧状の水が発生するような場所で感染が報告されてきました。今回の事件も、菌に汚染された加湿器のタンク水から空気中に広がったとみられます」
今回、施設の加湿器からは、患者発生のリスクが高まる基準とされている値(100ml当たり100個の菌のかたまり)の実に2200倍の菌が検出された。これほど菌が繁殖した理由について、『レジオネラ症対策のてびき』(日本環境衛生センター刊)の著者で、対策に詳しい中臣昌広さんが指摘する。
「1つは、施設側の衛生管理不足が考えられます。施設側は、週に1度は加湿器タンクをブラシで洗浄していたという報道がありましたが、洗浄だけでなく塩素などで殺菌消毒しなければ、完全には繁殖を防げません。
また、水そのものにレジオネラ菌が潜んでいた可能性もあります。大きな病院、高齢者施設などは、貯水槽を設置してそこから水を引っ張っていることがあります。施設の水の使用量が少なかったりすると配管に水が滞留しやすくなり、水道水にもともと含まれている塩素濃度が下がって菌が増殖してしまうこともあるのです」
定期的に洗浄・殺菌していても、方法によっては逆効果となる場合もある。
「プラスチック容器などを硬いブラシやアルミ製のたわしなどで強く擦ると、細かな傷が残り、そこに微細な菌がすみついて増殖する場合もあります」(中臣さん)
2000年以降、年間百数十件で横ばいだったレジオネラ菌感染者数は、2005年に200件を超え、2017年は1722件と15年間で実に10倍以上と急増している。
「検査が簡単になり、保険適用になったことで検査を受ける人が増え、報告数も増えているのでは」
急増の理由について中臣さんはこう話すが、死亡例が報告された以上、毎日使用する加湿器が要因ならば見過ごすことはできない。
※女性セブン2018年2月22日号