「奨学金」といえば、かつては成績優秀な苦学生のためのものだった。日本育英会(現・日本学生支援機構)の貸与基準は厳しく、20年前までは大学生の約10人に1人しか受給できなかった。
しかし、いまや奨学生の実態は大きく変わった。国の奨学金制度が拡充され、成績や親の収入などの基準が緩和され貸与枠も大幅に拡大されたが、一方では“奨学金破産”が社会問題になっている。奨学金の延滞率をもとに「卒業後の生活力」という新しい視点で大学を比較していくとどうなるのか? 早稲田大学と慶應大学を比較してみた。
早稲田と慶應は学生数など大学の規模はほぼ互角、偏差値や有名人気企業への就職率で私大トップを争う。しかし、奨学金受給者で卒業後5年間(貸与終了後5年間)の延滞者数(※延滞3か月以上の者の人数)を比べると慶應は52人なのに対し、早稲田は3.4倍も多い180人にのぼる。
奨学生1人あたりの卒業時の平均受給額は約343万円(有利子タイプ)であり、その大半の返済が滞っていると仮定すれば“滞納総額”は早稲田OBだけで、6億円にのぼる計算になる。早慶のOB間で奨学金の「返済力」にそれだけの大差があることを示している。
現在、大学生の5割が奨学金を借りているとはいっても、奨学生の割合が1割台と低い大学から、6~7割にのぼる大学まで、受給率そのものに大きな差がある。慶應の受給率は12.1%と、全大学で非常に低い水準にあるのに対し、早稲田は23.3%が奨学生だ。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号