ライフ

ガンを患ったラガーマンが妻に残したスマホ動画の内容

ガン患ったラガーマンの夫が妻に残した動画の中身(写真/アフロ)

 近くにいるからこそ気づきにくいのが家族の愛。困難や苦労を共に乗り越えたからこそある心温まるエピソード。35才の会社員の女性がそんな思い出を語ってくれた。

 * * *
「もう見舞いに来ないでくれ」

 げっそりとやせ、生気を失った夫は、その意志の固さを示すように、瞳にだけ力を込めて妻である私にそう言ったのです。亡くなる1週間前のことでした。高校・大学とラグビーに励んでいた夫は、見るからに屈強そうで、病弱な私とは対照的。プロポーズの言葉も「おれがお前を守るから」でした。

 その言葉通り、子供ができないからとつらく当たる義母や世間から私を守り、本当にやさしく包み込んでくれる人でした。夫はまさに私のヒーローだったのです。

 そんな夫にがんが見つかったのは彼が32才の時。すい臓がんのステージIVでした。私は仕事を辞め、毎日病院に通いました。しかし看病の甲斐なく、夫はやせていきます。それでも決して、嘆いたり、泣いたりすることはありません。むしろ泣くのは私。夫は笑顔で励ましてくれるほどでした。

 しかし、入院から数か月後、あとは痛み止めくらいしか処置の仕様がないことを医師に告げられると、夫は急に私を突き放すようになったのです。そして泣きながら、

「お前の前では最後まで、強い男でいさせてくれ」

 と。夫が涙を流す姿を、私は初めて見ました。

「つらい治療にも弱音も吐かずに向き合っているあなたは、今だって強い男よ!」

 私は夫にできるだけ明るく告げ、それからも毎日、看病に通いました。もう私が泣いてはいられませんでした。

 ところが、洗濯のため一度帰宅した際に、ひとりで逝ってしまったのです。私に死にゆく姿を見られたくなかったのかもしれません。でも、夫のスマホには、「一緒になれてよかった、愛してる、ありがとう」の動画が…。最期まで夫は、間違いなく私のヒーローでした。

※女性セブン2018年2月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン