人を癒せるのはやはり人。そんなことを感じるにはいられない、涙なくしては語れないエピソードを44才・主婦が語ってくれた。
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ロボットのお局様…。
これが私の職場でのあだ名でした。無表情で人とうまくコミュニケーションが取れなかったからです。
私は幼少の頃、父から暴力を受けていました。母はそれを黙認。それだけでなく、家にもあまり帰ってきてくれませんでした。そのせいか、両親が好きという友人の話を聞いても共感できませんでした。
そんなある日、5歳年下のAさんが異動してきて、私が教育係になりました。お礼を兼ねてと食事に誘われることが増え、ついにはおつきあいすることに。でも、ありがたいとは思うものの、“好き”という気持ちが理解できません。プロポーズされた日、私は正直に彼に、
「私は愛がわからないので、あなたを不幸にしてしまう」
という理由で、お断りしました。それにもし、結婚して子供ができたら父親のように暴力をふるうかもしれないし、母親のように育児放棄するかもしれません。するとAさんは、「きみは愛情を知らない人間じゃない。ぼくにするのと同じように子供に接すればいい。家庭をつくるのは初めてで不安かもしれないけど、それはぼくも同じ。一緒に築いていこう」と言ってくれたのです。
私は結婚しました。それでも妊娠した時はやはり恐怖を感じました。でも夫に、「笑顔を見せることとほめること、それだけできれば充分」と言われ、それを胸に育児に励みました。私はきちんと妻と母をできているのか、まだ自信はありません。
でも、夫と子供の笑顔を見ると、幸せな気持ちになることだけは確かです。
※女性セブン2018年2月22日号