日本人はいつまでも米国が守ってくれると思い込んでいるのではないか。しかし、現実を直視する必要がある。米中は急激に接近し、両国の新型大国関係は事実上始まっている。むしろ米国から見放される可能性もあるのだ。京都大学名誉教授の中西輝政氏が警鐘を鳴らす。
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2016年11月、安倍首相は世界の首脳で最も早く大統領選に勝利したばかりのトランプに会いに行った。以降も「トランプべったり」の個人外交を繰り返している。
だが、昨年5月にドイツのメルケル首相が「欧州が他国に完全に頼ることができる時代はある程度終わった」と宣言するなど、欧州、中南米、カナダなどで“トランプ離れ”が進む。
北朝鮮の核危機に目を奪われるあまり、日本だけが世界的な地殻変動を見逃しているのだ。確かに中国、北朝鮮という地政学的リスクを抱える日本が米国を頼るのは当面は合理的な選択だが、いったん有事になった時、本当に米国は当てになるのだろうか。
歴史を振り返ると、米国は何度も同盟相手を見捨ててきた。第二次大戦時では日本と戦う中華民国を支援したが、蒋介石が国共内戦で毛沢東の共産党軍の攻撃を受けると、米国は援助を打ち切り蒋介石を見捨てた。
また、冷戦時に南ベトナムやハンガリー、チェコが共産勢力と対峙した際も共産主義からの「解放」を訴えて支援を仄めかしたが、最後は見捨てた。建国以来、孤立主義の伝統がある米国には、「わが国が安全ならば、世界の正義と民主主義は生き延びる」との本能的な独善主義がある。日本に対しても同様だ。
昨年2月、マティス国防長官が尖閣諸島について「日米安保条約の適用対象」と発言すると、日本のメディアは欣喜雀躍した。だが平時の抑止を目的とする安保条約には“逃げ道”が多い。