セブン─イレブンが3月上旬から「セブンカフェ」を大幅に刷新することが話題となっている。年間10億杯も売れている“お化けコーヒー”を変える真意は何なのか。初代セブンカフェの開発時から取材を続けるコンビニジャーナリスト・吉岡秀子氏が分析する。
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2月9日にセブン─イレブン(以下セブン)が行った記者会見以来、「セブンカフェ大刷新」のニュースが飛び交っている。
筆者も会見に出席し、新旧のホットコーヒーを飲み比べたが、ひと口含んでぎょっとした。何これ、めっちゃ変わってる!コーヒー通ではないのであくまで私見だが、以前のセブンカフェは一言でいうと「あと味すっきり」。リニューアルしたそれは「コク深くリッチな味わい」だ。
価格を据え置いた上で「リッチさ」を実現するために、(1)豆を1割増量(2)焙煎方法を2種類から3種類へ変更(3)豆の蒸らし時間をより長く(1杯の抽出時間45秒はそのまま)と説明があったが、興味を持ったのは、製法をグレードアップした点ではない。
「日本一売れているセブンカフェを変えることは、新しい価値をお客様に提供することであり、セブン─イレブンがジャンプアップ、いやステージアップすること」
商品本部FF・惣菜部総括マネジャーの髙橋広隆さんがそう説明した、セブンの攻めの姿勢だ。
そもそもセブンカフェは、単なる淹れたてコーヒーじゃない。「コンビニコーヒー」として練りに練られた戦略を背負っている。本稿ではセブンカフェ刷新で鮮明になった、セブンの成長戦略を掘り下げてみたい。
実は、初代セブンカフェの生みの親は、当時担当チーフマーチャンダイザーだった高橋さんだ。以降、担当者が変わって今に至っているのだが、「だし文化の日本人には、エスプレッソよりドリップコーヒーのほうが好まれるのではないか」と、仮説を立てて開発チームを引っ張った本人が会見で語った言葉の端々に、ヒットの法則が読み取れる。
「ボタンひとつで、さらに上質なコーヒーが手ごろな価格で飲めるという価値をお客様に提案する」
「(セブンは)コーヒー屋ではないので、他の食品のおいしさを邪魔しない味を狙った」
「コーヒーをリッチに変えることで、より高品質な商品を提供するきっかけになる」
……などなど。上記のセリフを言い換えると、セブンカフェが担うミッションがわかりやすい。
(1)近所のコンビニにおいしい挽き立てコーヒーが100円であるという利便性の追求
(2)おにぎりやサンドイッチを買うついでにコーヒーも、という併売率の向上
(3)嗜好性の高いコーヒーが持つ集客力
つまりセブンカフェは、専門店のように単体で勝負するために作られたのではなく、「来店動機」や「ついで買い」のきっかけを作るコンテンツのひとつとして誕生したわけだ。この点でいえば、ローソンのマチカフェも、ファミリーマートのファミマカフェも、エスプレッソマシンの特長を生かして他社にはできないコーヒー戦略を展開していることには違いない。
ただセブンカフェに限ってみれば、2009年に再定義された「近くて便利」というカンパニースローガンに基づいていることがポイントになっている。