現在シニア層だけでなく広い世代で都会と地方の二拠点生活をする人が増えている。いなか暮らしや移住についての相談に乗る『ふるさと回帰支援センター』への昨年1年以内の移住相談件数は約3万3000件。そのうち20~40代が全体の約7割を占めているという。
今はパソコンさえあれば、どこでも仕事ができるため、活動拠点を都会だけでなく、地方にも置きたいという気持ちが強まっていると分析されている。
生活の拠点を2つ持つということは、よいことも多そうだがそれなりの苦労も伴うものだろう。ここでは実際、東京・新潟、千葉・長野で二拠点生活を送る2人に話を聞いた。
65才のS子さんは、二拠点生活歴6年だ。東京の住まいを売却し、新潟市内に2LDKのマンションを購入。東京では約30平方メートルのワンルームを借りてひとりで暮らしている。
東京で旅行関係の仕事をしていたS子さん。定年を機に東京のマンションを売り、学生時代を過ごした新潟県へと生活拠点を移した。
「現在は、都内に小さな部屋を借り、仕事があれば上京しますが、それも東京五輪までと決めています。長年住んできた東京が、五輪でどう変化していくのかを見届けたいので。これから老後を迎えるにあたり、金銭面でも二拠点生活をずっと続けるのは難しい。いずれは新潟に定住したいと思っています」(S子さん)
続いて、42才イラストレーターの田中幸穂さん。二拠点生活歴20年になる。千葉の100平方メートルの4LDKに家族5人暮らし。長野県の山奥にある山小屋で月1回は過ごす。毎年5月はベーコンを作るのが恒例行事という。
普段は千葉に住んで仕事を行い、まとまった休みがあると長野の山奥で過ごす、という田中さん。
「長野の家は、私の両親がみんなで使えるようにと20年前に購入。きょうだいの家族も時々、そこで過ごしています。子供たちと一緒に山菜採りをしたり、紙すきをしたり、都会ではできない体験をしています。自然に囲まれるとリラックスできるため、仕事のイメージがひらめきやすいんです。
でも、維持が大変。春になっても雪が残っているので、雪かきも必要ですし、家のメンテナンスも小まめにしなくてはいけません。今後の問題としては、行ったり来たりの生活がいつまでできるか、税金はどうするかなどがありますが、第二の場所が負の資産にならないように、今から家族で話し合っています」(田中さん)
※女性セブン2018年3月1日号