ユニークで便利な商品を続々と生み出しているサンコー株式会社からまたもやヒット商品が登場した。その名も『アイロンいら~ず』。約700点の商品を扱う同社のなかで、2017年の売り上げランキング1位を獲得。1台で乾燥とアイロンがけが同時にできる乾燥機の開発秘話に迫る。
家事のなかで「苦手だ」という声が多くあげられている“アイロンがけ”。特にワイシャツは、しわがつきやすい生地のものがほとんどなうえに、襟、ボタン、袖などのパーツが多いのでとにかく面倒だ。サンコーが毎週実施している、社員による商品提案会議でも「アイロンがけの手間を省きたい!」という声があがり、2015年9月に『アイロンいら~ず』の開発が始まった。
『アイロンいら~ず』は人型のエアバッグと温風の出る小型乾燥機がセットになった、布団乾燥機の原理を応用したアイテムだ。洗濯・脱水が終わった状態のシャツをエアバッグに着せ、下部に取り付けた乾燥機から温風を送りエアバッグを膨らませることで、約30分で乾かしながらしわを伸ばせるという仕組み。
開発当初は、市販の布団乾燥機を使うことを前提とし、布団用のエアバッグを洋服用に改良して販売することを考えたという。
まず試した、筒状のエアバッグをコの字形に曲げて片側から温風を流し込む構造は、温風が袖まで届かず、乾かなかった。そこで考えたのが、両腕をつけた人型のエアバッグ。これなら袖まで温風を届けられるが、エアバッグが膨らみすぎて、脇や腰の部分にしわが入った状態で乾いてしまい、結局アイロンを使わなければならない。
だが、エアバッグに細かな穴を開け、空気を逃がして膨らみすぎないようにすると、空気が逃げすぎて生地の厚い袖口や襟元が乾かない。エアバッグだけを商品化するには生産コストがかかりすぎてしまう、などの問題も重なり、一旦計画は頓挫した。
計画は、2016年5月に再スタートを切ることとなる。エアバッグだけではなく、乾燥機も自社で開発し、現在のセットで販売することにした。改めて人型のエアバッグも構造を見直し、身頃と袖口、襟元にファスナーを付けることで、適度に空気を抜けるようにし、脇や腰部分に入るしわを軽減。大・小2種類のエアバッグを用意し、Sサイズ~3Lサイズまでのワイシャツに対応したという。
2017年8月に商品を発売すると、わずか1週間で数千台の初期ロットが完売。再入荷しても9割が予約分に回るほどの人気商品となった。ユーザーからは、「温かいシャツが着られるので冬場に便利」と好評。
また、「窓際に置くと防犯代わりになる」というひとり暮らしの女性の声もあったという。さらに、クリーニング店からは「業務用で使うプレス機と同じ原理で驚いた」との声もあった。
プロのワザが家で実現でき、ワイシャツ1枚にかかる約200円のクリーニング代が、電気代約13円に節約できるところもヒットの要因の1つだろう。
※女性セブン2018年3月1日号